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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

10歳の少女にも遺体解体を手伝わせ…逃走の枷になる“犯罪への加担”が現実となった

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #69

2021/09/07

genre : ニュース, 社会

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第69回)。

北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

弱みを握るために書かせた念書

 松永太と緒方純子によって、緒方家の家長である緒方孝さん(仮名、以下同)が殺害されたのは1997年12月21日のこと。

 孝さんの遺体は、「片野マンション」(仮名)の南側和室に敷かれた布団の上に寝かせられていた。その後、松永がなにを指示したのか、福岡地裁小倉支部で開かれた公判での判決文(以下、判決文)に出てくる緒方の証言が、殺害直後の詳細を明かす。

〈松永、緒方、和美(緒方の母)、智恵子(緒方の妹)及び隆也(智恵子さんの夫)が孝の死体を囲んで話合いをした。松永が、緒方、和美、智恵子及び隆也に対し、「どうするんだ。」などと問い掛けて話合いを勧め、孝の葬式等をすれば緒方一家にとって不利益になること、すなわち、緒方が孝を殺害したことに加えて、緒方がこれまでに祥子(大分県の別府湾で水死した末松祥子さん)や由紀夫(「片野マンション」で衰弱死した広田由紀夫さん)を殺害し、由紀夫の遺体を解体したことや、隆也が智恵子に対し殺人未遂をしたことなどが警察沙汰になれば、親戚にも迷惑がかかるなどと言った。隆也は上記殺人未遂を認める念書を作成していた〉

 私の手元にある〈緒方一家/念書・確認書等〉という書類によれば、ここに出てくる〈念書〉とは、隆也さんが97年11月27日に〈上申書〉との題名で作成したもの。その内容は〈H9.9末~10末、ビジネスホテル××30×号室で智恵子の首を絞め絞殺しようとしたが、花奈(隆也さんと智恵子さんの長女)が被告人緒方らに通報し、孝からも制止された〉とある。

 これも元を糺せば、松永が画策した分断工作によって、隆也さんが妻の智恵子さんに対する怒りを爆発させたところで、仲裁に出た松永が“殺人未遂”であると隆也さんを糾弾。彼の弱みを握るために書かせた念書だった。