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「読んではいけない反ワクチン本」 遺伝子改変、不妊、何年か後に副作用…偽情報を徹底検証

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2021/09/14

「文藝春秋」2021年10月号より「読んではいけない『反ワクチン本』」(大阪大教授・忽那賢志氏)を全文公開します。(全2回の1回目/#2に続く)

 いま日本国内で新型コロナワクチン接種が急ピッチで進められています。8月末時点で2回接種を終えた人の割合は、総人口のうち約45%に達しました。

 ワクチン接種が進む一方で、新型コロナワクチンの危険性を喧伝する「反ワクチン本」が多数出版されています。その内容を見ると、「遺伝子改変が起こる」「不妊になる」など、医学的に誤った情報があふれています。「よくこんなことを考えつくな」と驚くようなものもありました。

 そうした書籍の中には、ネット通販で売れ行きランキングの上位に入っているものもありますし、本にある誤情報が、個人のSNSを通じてネット上にも出回っている状態で、さすがに看過できません。

大規模接種会場でワクチン接種を受ける女性 ©共同通信社

反ワクチン論者たちは不安につけこんでいる

 もともと日本は、ワクチンへの信頼性が低い国です。1940年代には、「京都・島根ジフテリア事件」などをきっかけに、ワクチンへの不信感が広がりました。近年では、子宮頸がんなどを予防する「HPVワクチン」のミスリーディングな報道のため、ワクチン全般に対する不安が一層強まりました。

 ですから新型コロナワクチンについても、不安を抱く人は一定数いるだろうと予想はしていました。反ワクチン論者たちは、その不安につけこんでいるわけです。

 ワクチンを接種するかどうかは、あくまで個人の判断にゆだねられています。「何が何でも打ったほうがいい」というものではなく、打たない選択肢もあります。

 ただ、ワクチンを打てば感染や重症化は高い確率で防げます。大阪府の調査では、今年3月以降、ワクチンを2回接種した感染者の中には死亡や重症化したケースがなかったと明らかになりました。東京でも今年7月19日以降の1カ月間で、2回接種で亡くなった方は全体の2%だという調査結果が出ています。