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2021/09/15

虚偽申告の動機は何だったのか?

 これは一体、何を意味しているのだろうか。

 ここで、もう一度、前述の〈解体撤去処理業務契約書〉の右側、笹山幸俊市長(当時)らの記名押印の下にある、公費解体の対象となる〈物件の表示〉の部分を見ていただきたい。

さんプラザビル7〜10階の解体撤去工事を公費負担で行うための〈解体撤去処理業務契約書〉。神戸市と鉄建建設、サン社の「三者契約」となっている。契約書右側、笹山幸俊市長(当時)らの記名押印の下にある、「物件の表示」欄には、延床面積〈55,865.93㎡のうち13,352.13㎡〉とあるが、この〈13,352.13㎡〉が、実際に「三者契約」に基づき、公費解体が行われた対象面積だった。

 さんプラザビルの延床面積〈55,865.93㎡のうち13,352.13㎡〉とあるが、この〈13,352.13㎡〉が、実際に公費解体された7~10階部分の対象面積である。

 一方、〈解体撤去〉されたことになっている区分所有物件の171枚のそれぞれの〈明細〉に記された、公費解体の対象となる床面積を合算すると〈13,352.13㎡〉。数字の上では合っている。

 だが、この171枚の中に1枚だけ、当時、大倉産業が所有し、実際に公費解体された高層階の〈明細〉が紛れ込んでいるのだ。

〈建物所有者氏名〉欄に〈大倉産業株式会社〉と記載されたその〈明細〉は、それに記載された〈家屋番〉と〈延床面積〉から、同社が当時所有していた、さんプラザビル9階部分のものであることが分かる。

 9階部分の延床面積は、明細に記されている通り〈1,388.91㎡〉。ところが、そのうちの約3割にあたる〈415.52㎡〉だけしか、〈解体撤去〉されていないことになっているのである。

苦肉の策での“数合わせ”だった

 実は、この大倉産業分を除く170物件、つまりは3階以下の区分所有物件の床面積をすべて合計しても〈12,936.61㎡〉と、実際に公費解体された高層階の〈13,352.13㎡〉に足りない。

 そこで、苦肉の策として、大倉産業が所有していた9階部分のうち〈415.52㎡〉だけを〈解体撤去〉したことにして、それに加えるという“数合わせ”をしているのである。

 つまりサン社は、実際には、さんプラザ高層階が公費によって解体されたにもかかわらず、神戸市や国に対し、自力復旧した低層階を公費解体した――と虚偽の申告を行っていたわけだ。

大倉産業が所有していた高層階、9階部分の〈解体証明対象物件明細〉。延床面積が〈1,388.91㎡〉であるにもかかわらず、そのうちの約3割、〈415.52㎡〉だけが〈解体撤去〉されたことになっている。

 それにしても、である。

 これまで述べてきたように、サン社が震災後、四半世紀にわたって、訴訟相手の大倉産業に対し、自らの利益のために、虚偽に基づく不当な要求を続けていたことは――それが、被災自治体の外郭団体の被災者に対する姿勢として正しいか否かは、まったく別の問題だが――まだ、理解できる。

 だが、サン社はなぜ、自らを管理・監督する、いわば“本店”の神戸市にまで、虚偽の申告をする必要があったのか。