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2021/09/15

“虚偽申告”の背景には……

「しかし、サン社もここまでやるかね……」

 前回(#4)取材に応じてくれた、約30年に及ぶ、さんプラザ高層階をめぐる訴訟の経緯を知る神戸市関係者は、私が手渡した181枚の〈解体証明対象物件明細〉に目を通した後、ため息混じりにこう呟いた。そして当時、サン社が神戸市に対し虚偽を申請した“意図”を、こう推し測るのだ。

「おそらくサン社は、(大津地裁に)大倉産業の破産宣告申し立てを行う(97年、#1参照)ギリギリまで、大倉産業に対し、高層階の『公費解体』の事実を隠し、あくまでサン社が、大倉産業の委任を受けて『自己解体』し、その費用を立て替えたとして、同社がそれまで滞納していた共益費(約3億円)のうち、何億かでも回収しようとしたのだろう。

 しかし、その間に大倉産業が、高層階の解体撤去費用が公費で賄われていたという事実に気付くことに備え、書類上、『低層階を公費解体した』ことにしたのではないか。

 そうすれば、(阪神大震災当時の様々な国の支援)制度に疎かった大倉産業に対し、『公費は、低層階の解体名目で、実際は復旧工事に充てた』などと強弁できるからね」

「神戸市が騙されるわけがない」

 だが、この神戸市関係者は同時に、「しかし……」とこんな疑問を呈するのだ。

「こんな杜撰な虚偽申告で、大倉産業は騙せたとしても、(神戸)市が騙されるわけがない。現場を見れば、すぐに分かる話だから」

 つまり、サン社側の申告を受けた神戸市も、それに虚偽が記載されていることを承知で受け付けた、つまりはサン社と“グル”だった可能性が高いというのである。

神戸市役所 ©AFLO

「でないと、こんな虚偽文書が、その内容も訂正されないまま、今も市に保管されていることの説明がつかないでしょ」

 市関係者は最後にそう言った。

 確かに、さんプラザは今も、市役所庁舎の目と鼻の先にある。そして、そもそも、10階建てのビルの3階以下の部分だけが解体撤去された――つまりは4階以上が宙に浮いている――などという、非現実的な申告を受け付けること自体、おかしな話だ。

 また、仮に、当時の市の担当者が、震災直後の混乱で、「うっかり」見逃してしまったとしても、だ。市職員のほとんどが、出勤途中に必ず目にするであろう場所に、申告された内容とは全く異なる、「高層階が解体撤去されたさんプラザビル」が建っていたはずである。

 やはり、ことの真相は、サン社に問い質すほかないだろう。