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神戸再開発から取り残された「さんプラザ」の真相 市の外郭団体は“4億5000万円の架空請求”に手を染めて…

歪んだ復興 #6

2021/09/15

 神戸市の外郭団体、神戸サンセンタープラザ(以下「サン社」)が、さんプラザビルの高層階をめぐり、訴訟で対立する所有者を排除するため、元「地上げ屋」にその一部を売り渡した、同社が「所有者に対して保有する」と主張する債権「約929万円」――。

 だが、この「約929万円」は、阪神・淡路大震災で倒壊した、さんプラザ7~10階の解体撤去工事が、公費負担によって行われたのにもかかわらず、サン社が、所有者にその工事費の支払いを要求していた、つまりは「4億5000万円」の“架空請求”から生み出された“架空債権”だった(#4参照)。

 そして、驚くべきことに、サン社は今日に至るまでなお、訴訟相手の「大倉産業」(#1参照)だけでなく、裁判所にまで、このありもしない“架空債権”を、「大倉産業に対し保有している」などと虚偽の主張を繰り返しているのだ。(集中連載最終回/#5から続く

繰り返された“架空請求”

 サン社が、この“架空債権”を捏造した具体的な手口について説明する前に、まずは、その母体となった、同社による“架空請求”の顛末について説明しておこう。

 サン社による“架空請求”の事実が明るみに出そうになった2週間後の1996年3月14日、当時のサン社の社長で、神戸市助役だった小川卓海氏が自らの体に火を放ち、焼身自殺を遂げたことは、中編(#3#4)で述べた。

 ところが、信じられないことに、サン社は、この小川助役の自殺後も、大倉産業に対し、「4億5000万円」の“架空請求”を続けていたのだ。

神戸市役所 ©AFLO

 私が入手した、神戸市の〈平成07年度 支出命令書〉によると、さんプラザ7~10階の解体撤去工事を請け負った「鉄建建設」は、#4で詳述した公費解体の「三者契約」に基づき、小川助役の自殺から11日後の3月25日、神戸市に対し、契約書に記載された工事費〈4億2984万9890円〉を請求。同年4月3日付で、当時の市の指定金融機関から、その全額が支払われている。

 繰り返すが、この工事費〈4億2984万9890円〉は全額、国と神戸市から拠出された公費によって賄われたものである。

 にもかかわらず、サン社は〈平成8年7月10日〉付で、大倉産業に対し、〈代表取締役 鷹取治〉名で、〈さんプラザ7階~10階の解体撤去工事費として〉の但し書きのついた、「4億5000万円」の請求書と、サン社の指定銀行が記された振込依頼書を送付するのだ。

預金口座を差し押さえた上で……

 一方、連載の#1でも触れたように、両者は震災前から、大倉産業が滞納を続けていた共益費の支払いをめぐる訴訟を抱えており、神戸地裁は96年7月1日、サン社側の主張を認め、大倉産業に対し、滞納していた共益費約3億円の支払いを命じた。

 前述の「4億5000万円」の請求書と振込依頼書が、サン社から大倉産業に送られてきたのは、その一審判決から僅か9日後のことである。

 
小川助役の自殺後、96年7月と9月の2度にわたって、サン社から大倉産業に送付された「4億5000万円」の請求書と振込依頼書。

 さらにサン社は8月9日、前述の判決を受け、大倉産業の、すべての取引銀行の預金口座を差し押さえた上で、約1カ月後の〈平成8年9月10日〉付で、前回と同様の「4億5000万円」の請求書を送りつけるのだ。

 これだけでも、大倉産業に対するサン社の異様な“執念”が感じ取れるが、問題は、#4でも詳述した通り、この「4億5000万円」自体が“架空請求”だったこと、である。