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2021/09/15

約929万円の“架空債権”を主張

 サン社による全預金口座の差し押さえによって資金ショートに陥った大倉産業は97年10月1日、銀行不渡りを出す。さらには、その1週間後の同月8日、前述の共益費をめぐる訴訟の控訴審で、大阪高裁は一審判決を支持。大倉産業に、滞納していた共益費約3億円の支払いを命じたのだが、この時すでに同社には、最高裁へ上告する余力は残されておらず、判決が確定した。

 これらを受け、サン社は翌月の11月27日、大倉産業の本店所在地の大津地裁に対し、同社の破産宣告申し立てを行うのだ。が、その際、サン社が大津地裁に提出した「破産宣告申立書」の中に、奇妙な記述が残されている。

「申立書」の中で、サン社は、自らが大倉産業に対して保有する債権として、前述の大阪高裁判決で確定した、大倉産業が滞納していた共益費約3億円などとともに、次のような〈債権の存在〉を主張しているのだ。

〈(大倉産業)神戸営業所解体撤去費用の一時支弁金としての金九、二九八、一四七円〉【( )内は筆者補足】

〈(大倉産業)神戸営業所〉とは、公費解体された、さんプラザ7~10階のことを指している。

 そう、この〈金九、二九八、一四七円〉こそが、“架空債権”「約929万円」なのである。

裁判所にも虚偽の申請をしていた

 さすがのサン社も、裁判所に対してまで、「4億5000万円」の“架空請求”をそのまま、「大倉産業に対して保有する債権」と主張するのは、まずいと思ったのだろう。ここにきてはじめて、さんプラザ高層階の解体撤去工事が、公費負担で行われた事実を認め、実際の工事費を差し引き、請求額を大幅に減らしたわけだ。

 とはいえ、この「約929万円」の母体となる「4億5000万円」がそもそも“架空請求”だったという事実に変わりはない。にもかかわらず、サン社は、この、ありもしない〈債権の存在〉を裁判所に申し立てたのである。

「さんプラザ」ビル。かつては10階建てだったが、現在は6階までしか存在しない。奥に見える19階建てのビルは「センタープラザ」、その奥が「センタープラザ西館」。(著者撮影)

 つまり、サン社は大津地裁に行なった破産宣告申し立ての中で、虚偽の申請をしたわけだ。

 このサン社による破産宣告申し立てから約5カ月後の98年4月、大倉産業の服部躬依(きゅうえ)社長(#4参照)は、失意のうちにこの世を去るのだ。が、大津地裁もまさか、神戸市の外郭団体という公の組織が、裁判所に虚偽を申請するとは、想定していなかったのだろう。この“架空債権”「約929万円」を含めたサン社の申し立てを認め、2000年7月、大倉産業に対し、破産宣告を下したのである。

 そしてサン社は、この“架空債権”の存在が大津地裁に認められたことを奇貨として、今日に至るまで、それを「大倉産業に対し保有している」との主張を続けているのだ。