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2021/09/15

 後にサン社が、この「約929万円」の一部を、元「地上げ屋」の室鋭三郎氏に売り渡したことによって、室氏の経営する「有限会社MURO」と大倉産業関係者との間で、さんプラザ高層階の所有権や抵当権などをめぐる、新たな訴訟が生じたことは前編(#1#2)で述べた。

 これらの訴訟の中で、原告の「有限会社MURO」側の申し立てによって行われた、神戸地裁による調査嘱託に対し、サン社は「約929万円」の根拠などについて、2017年4月と7月の2度にわたって文書で回答している。

“架空債権”の計算式を辿っていくと……

 調査嘱託とは、裁判所を通じて、第三者に対し、情報開示を求める制度だ。

 それらの「回答書」によると、サン社はまず、解体撤去工事終了後の〈平成8年〉、鉄建建設との間で、当初の〈請負代金 4億5000万円〉から、公費によって賄われた実際の工事費〈4億2984万9890円〉+〈大企業に対する公費負担額312万6963円〉を引いた、〈1702万3147円〉を、最終請負代金とする契約変更を行った――としている。

〈大企業に対する公費負担額〉とは前回(#5)でも述べた、瓦礫の「撤去」費用のみが対象となった「大企業」への補助金のことである。

 そして、サン社はさらに、この最終請負代金〈1702万3147円〉から、その他の〈公費負担等〉によって賄われた諸経費を引き、最終的に、サン社が大倉産業の代わりに立て替え、鉄建建設に支払った金額は〈929万8147円〉と算出している。

「さんプラザ」の6階部分。1995年1月17日の阪神・淡路大震災発生当日のままの姿で残されている。ある意味、「震災遺構」といえるだろう。(著者撮影)

 よって、さんプラザ7~10階の解体撤去に伴い、サン社が今も大倉産業に保有している債権は〈929万8147円〉、すなわち「約929万円」となる――という主張だ。

なぜ低層階の撤去費が含まれているのか?

 ところが、である。

 前回(#5)でも述べた通り、震災当時、さんプラザビル高層階は、大倉産業の一社所有で、他の区分所有者は存在していなかった。

 その一方で、撤去費のみが公費負担の対象となった「大企業」は当時、前回(#5)でも述べた通り、すべてが3階以下の低層階の区分所有者だったのだ。

 にもかかわらず、なぜ、高層階の解体撤去費を算出する計算式に、低層階の撤去費が含まれているのか。

 この一点だけでも、サン社が「約929万円」を捻り出した計算式が筋の通らないものであることが分かるが、不審な点はまだある。