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genre : ライフ, 人生相談

翌日、蜂谷さんは仕事を終え、病院に向かう。意識がないはずの母親は、お腹が痛いらしく、腹部に手を当てていた。蜂谷さんは「ばーさん、来たからね」と伝えてお腹をさする。すると母親は、「歩美、ありがとう……」と振り絞るような声で言った。

しばらくすると看護師が「今夜は大丈夫そうです」と声をかけてくれたため、「また明日ね」と伝えて帰宅。翌朝7時ごろ、蜂谷さんのスマホが鳴った。

蜂谷さんが一人で病院へ向かうと、バイタルメーターの波が弱くなり、血圧も下がってきていた。8時22分、母親は死去(享年80)。蜂谷さんは47歳になっていた。

「精神的な病に苦しんだ数十年。やっと楽になれたはず……と思いました」

涙が静かに流れた。だが、周囲の人間には、死を悼む気持ちはまるで感じられなかった。

葬儀の準備のさなか、夫が海外出張のとき亡き母親のために買ってきたブランドバッグを義母(夫の実母)が欲しいと言い出したかと思えば、息子は「明日ディズニーランドへ行きたい」とTPOをわきまえない願いを申し出た。

蜂谷さんが絶句していると、夫はブランドバッグを自分の母親に渡し、息子には「いいぞ。俺が駅まで送ってやる」と答えていた。

外資系企業勤務の夫はリストラ、息子は部活を辞め、学校も休む

2016年4月。高校3年生になった息子は、中学から5年間続けてきた部活を辞めてしまった。そして外資系企業に25年以上勤めてきた夫はリストラに遭い、早期退職することになった。

息子は「受験勉強に専念する」と言うが、真剣にやっているようには見えない。部活だけでなく、学校の居心地も、どんどん悪くなっていっているようだった。

「中等部の部活では活躍の場を与えてもらった息子ですが、友人などとの良好な人間関係は築けなかったようです。高等部の監督との相性の悪さも、さまざまなところに悪影響を及ぼしたのだと思います。夫は『監督が嫌なら、仲間たちと革命を起こせ』とけしかけていました。夫は、小学校のスポーツ少年団の時もコーチの態度に激怒して、試合途中に息子を連れ帰ってしまったことがあります。私は、6年たっても変わらない夫の対応にうんざりしていました」

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