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「第三者にセックス目的と思われたとしても構わない」妻子のいる私が“精子の個人提供”を続ける理由

国内初の民間精子バンクが誕生する一方で…

2021/10/18
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 個人で精子提供を行うサイト、「精子提供.jp」を運営する男性が初めて精子提供を行ったのは2009年、大学生のとき。知人の女性に頼まれ、シリンジ法(精液を注射器のようなものに入れ、女性の膣内に注入する方法)による精子提供を実施。女性は妊娠に至った。

 その後、男性は知り合いの依頼を受ける形で年に1回程度のペースで精子を提供。2012年からはmixi内での呼びかけを始め、現在はツイッターや自身のサイト上で申込みを受け付けている。今まで精子を提供した数は延べ約120件。推定60人ほどの子どもが誕生したという――。

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「精子提供」を巡って、いま日本国内の動きが活発になっている。

 1948年から第三者の精子を用いた人工授精(AID)を行ってきた慶応大学が、2018年に新規受け入れの中止を表明。AIDで生まれた子の「出自を知る権利」が注目されるに伴い、ドナーを集めることが難しくなったためだ。

 翌年には、デンマークの世界最大の精子バンク「クリオス・インターナショナル」が日本窓口を開設。2020年末には民法特例法で、婚姻夫婦が提供精子を用いて子を授かった場合、精子提供に同意した夫が親になるという親子関係を規定。そして今年4月、日本初となる民間精子バンク「みらい生命研究所」が設立された。

©:iStock.com

 男性が無精子症と診断されたカップルが妊娠を望む場合、AIDが有力な選択肢の一つとなる。だが、医療機関のドナー不足や高額の費用といった問題から、個人間の精子提供を選択するケースは少なくない。

 また、日本産科婦人科学会のルール上、医療機関でのAIDが対象になるのは原則として男女の夫婦のみ。このためレズビアンなど性的少数派のカップルやシングルマザー希望の女性が妊娠を望む場合にも、個人の精子提供者を自分で探し、直接交渉するということが行われてきた。

 しかし、個人間の精子提供はリスクを伴う。提供者の身元が保証されないうえ、性感染症の有無も定かではないからだ。一体、提供者はどのような人たちなのか。「精子提供」で検索するといくつものサイトにヒットするが、その一つ、「精子提供.jp」に目が留まった。