昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「売上が少ないから、夜中まで働いて」…“6人死傷事故”個人タクシー64歳運転手、母が語る素顔

 タクシーを待ち、歩道に立っていると、遠くで自転車が空中に舞い上がった。

「え! 今、撥ねたんじゃない!? と驚いた次の瞬間、黒い車が凄い勢いでこちらに突っ込んできたのです」(講談師・神田香織さん)

◆ ◆ ◆

突然事故に巻き込まれ、帰らぬ人に

 9月11日の午後4時20分、東京都千代田区で個人タクシーが歩道に突っ込み、6人が死傷する事故が起きた。4名が重軽傷を負い、小林久美子さん(73)が亡くなった。事故を起こした山本斉(ひとし)運転手(64)も帰らぬ人となった。

普段から現場付近で運転していた山本運転手

 その日、小林さんは自身が役員を務める「ちよだ女性団体等連絡会」の講演会運営のため、千代田区役所にいた。終了後、登壇者の神田さんをタクシーに乗せようとし、事故に巻き込まれた。神田さんが説明する。

「気が付いたら車が目前に来て、転倒して後頭部を強打しました。頭がズキズキして、抱えられながら区役所の中へ。しばらくして『小林さんは?』と心配になって、現場に戻りました」

 車の下に姿がないことを確認し安心して目を上げると、20メートル先で倒れ込む小林さんに気付いた。

「警察や救急隊員が周りにいて、近づくことはできませんでした……」(同前)

クラウンハイブリッドも大破

小林さんの弟が語る“優しい姉”

 大事を取って神田さんも東京逓信病院で検査をすることになったため、訃報を知ったのは帰宅後だった。

 小林さんの弟・文彦さんが語る。

「中学1年生の時に母が亡くなり、代わりに4歳年上の姉が家事をしてくれていました。優しい姉でした」

 英語の専門学校を出て、ロータリークラブで事務員として働き始め、国鉄労組に。30歳で結婚し、後に離婚。子どもはいなかった。

「父が亡くなり、2006年から同居しました。定年後は社会問題に取り組んでいました。ちよだ女性団体等連絡会もその一つ」(同前)