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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

妻と義父母の殺害と解体に手を染めさせられ…死の足音はすぐそばにまで迫っていた

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #73

2021/10/05

genre : ニュース, 社会

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第73回)。

北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

松永の“責任逃れ”の姿勢は、死体解体時も顕著だった

 松永太が示唆して、それを緒方純子らが忖度して実行する緒方家一家への連続殺人は、ついに3人目の犠牲者を生んだ。

 緒方の妹である智恵子さん(仮名、以下同)の遺体を前に、彼女の首を絞めた夫の隆也さん、足を押さえた隆也さん夫妻の長女である花奈ちゃんは緒方とともに、勝手に智恵子さんを殺害したことを、“事後”に松永から責められた。

 そうした松永の“責任逃れ”の姿勢は、死体解体の相談の場でも顕著だった。隆也さんらが智恵子さんの遺体の手を胸の前で組ませているのに気付いた松永はまず、「死後硬直が始まると手が外れなくなるから、すぐにほどけ」と指示をした。

 そして次のように言う。以下、福岡地裁小倉支部で開かれた公判での判決文(以下、判決文)にある説明である。

〈松永は、死体解体についての話合いの際、緒方、隆也及び花奈に対し、「お前たちが勝手にやったんだ。俺は関係ない。俺は巻き添えになっただけだ。迷惑だ。こんなところで解体なんかしてもらっても困る。「(※隆也さん一家が借りていた熊本県)玉名のアパートに持って行け。」などと言う一方で、「(死体を)持って行くときにばれると俺が迷惑だ。」などと言い、隆也及び花奈が松永の許可を得て「片野マンション」(仮名)の浴室で智恵子の死体解体を行わざるを得ないようにした〉

 当然、松永の“真意”を大人である緒方や隆也さんは理解していた。だが、反論することはできない。

小学生時代の松永太死刑囚(小学校卒業アルバムより)

作業中も「急がないと通電するぞ」

〈緒方及び隆也は、松永が責任逃れをしようとしていることは分かっていたが、松永に対し、「すいません。お願いします。」などと言い、「片野マンション」の浴室で死体解体作業を行わせて欲しい旨を頼んだところ、松永はこれを許可し、できるだけ早く終わらせるように言った。緒方と隆也は、松永との間で解体道具を購入する費用についても話をしたと思う。緒方らは、平成10年(1998年)2月10日午後7時過ぎころ、解体道具を買いに行った〉

 智恵子さんの遺体の解体は、緒方と隆也さん、花奈ちゃんの3人が行った。

〈松永は、死体解体作業中も、「急がないと通電するぞ。」などと言い、作業を急がせた。松永は、解体作業中、隆也に通電した。隆也の左の二の腕にガムテープでクリップを取り付け、電気コードを首に巻かせたまま作業をさせたことがある。松永は、智恵子の肉汁を詰めたペットボトルを捨てる際、緒方らに対し、誰がどこのトイレに何本捨てに行くかなどについて具体的に指示した〉