昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

大阪府唯一の陽子線治療施設として、前立腺がんに注力した治療を実施

医療法人伯鳳会 大阪陽子線クリニック

2021/10/29

手術、化学療法と並びがん治療の柱となる放射線治療の中でも、より低侵襲の陽子線治療に関心が集まっている。男性が多く罹患しやすいがんの1つである前立腺がんの陽子線治療に力を入れている、「大阪陽子線クリニック」で治療の概要を聞いた。

院長

山本道法

やまもと・みちのり
1987年岡山大学医学部卒業。癌研究会附属病院、東京医科歯科大学で放射線治療の研修を行う。岡山大学、呉医療センター勤務を経て、兵庫県立粒子線医療センターで粒子線治療の研修後、現職。

手術と同等の治療成績 保険適用で負担も軽減

 前立腺がんに注力する陽子線治療施設として2017年に開設された「大阪陽子線クリニック」。全国の陽子線治療施設18施設のうち、大阪府下で唯一の施設として関心を集めている。

 院長の山本道法医師は、「陽子線は生物学的にはX線と同じものですが、物理的性質が異なるため、同じ放射線量を投与した場合に体全体の被ばく量が半分と、体への負担が少ない放射線です。前立腺がんでは、放射線治療が外科治療と同等の治療成績であるという論文が欧州で2016年に発表されました。保険適用で費用面の負担も軽減され、例外はありますが、近くに陽子線治療施設があるなら、前立腺がんに関しては陽子線治療が有用と考えます」と語る。

クリニックは明るい雰囲気
クリニックは明るい雰囲気

再発率、副作用ともに満足な治療実績を残す

 同クリニックでは前立腺がんに注力し、さまざまな先進的技術を取り入れた治療を実施している。

 陽子線治療は水素から抽出した陽子を大型装置で光速の70%にまで加速させた陽子線を体外から照射してがん病巣を破壊するしくみ。同院では「治療用MRI」を導入し、 CT画像と併せて患部画像を取得する。また、前立腺内に金の粒子を埋め込んで目印とし、病巣の位置を的確に把握、ピンポイントで照射する。

 2019年には「ラスタースキャニング法」を採用し、陽子線に強弱をつけて病巣を塗りつぶすように照射することで、被ばくを最小限に抑えるようになった。

陽子線治療室
陽子線治療室

 これらの治療を推進した結果、開設以来、前立腺がんの再発症例数は0、加療が必要な副作用(グレード2以上)の症例も0という実績を残している。

 治療にあたっては院長始め4名の医師が、陽子線治療について丁寧にカウンセリングを行い、緻密な治療計画を立てる。照射を担当するのは照射全般を管理する3名の医学物理士を含む7名の放射線技師だ。陽子線治療に精通したプロフェッショナルを揃えた陣容だ。

加速器(シンクロトロン)。陽子を治療に必要なエネルギーまで加速させる
加速器(シンクロトロン)。陽子を治療に必要なエネルギーまで加速させる

外来通院での治療で患者の社会的ロスを軽減

 治療は、泌尿器科などからの紹介が主で、世界的なガイドラインに従い、概ね3Gy(グレイ)を20日間(週5日を4週)、通院して外来で治療を行う。1回の治療時間は照射時間1分を含み約15分だ。

「入院が必要ないので長期に仕事を休む必要がなく、患者さんの社会的損失が防げます。また、陽子線治療を実施することで、医療現場のロスも防げると考えます。外来で治療できる疾患は当院のような専門クリニックで実施し、総合病院のベッドや手術室は本当にそれらを必要とする患者さんのために充てるシステムを整えるのが今後の医療の在り方ではないかと考えています」

 この考え方は同クリニックが属し、大阪暁明館病院などを展開する「伯鳳会グループ」の考え方でもあるという。

 世界的に“持続可能な社会の実現”が提唱されている今、次世代を見据えて医療全体を考える姿勢も新しいクリニックといえる。

INFORMATION

クリニック外観。大阪市内にありアクセスが便利
クリニック外観。大阪市内にありアクセスが便利

医療法人伯鳳会 大阪陽子線クリニック

〒554-0022
大阪府大阪市此花区春日出中1-27-9
TEL.06-6462-1888
https://www.hakuho.or.jp/opc/

出典 : 文春ムック スーパードクターに教わる最新治療2021-2022