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東海地域で初稼働の陽子線スキャニング法専用機 がん医療の可能性を拓く

成田記念陽子線センター

2021/10/29

進化する陽子線治療の恩恵を、地域の誰もが身近に得られるよう開設された成田記念陽子線センター。効果がシャープで副作用は極めて少ない、がん医療の頼もしい選択肢だ。セカンドオピニオンにも応じているので、積極的に訪ねてみたい。

成田記念陽子線センター
センター長
名古屋市立大学名誉教授
芝本雄太

しばもと・ゆうた
1980年京都大学医学部卒業。1989年フンボルト財団奨学研究員(エッセン大学医学部放射線生物研究所)、1992京都大学胸部疾患研究所腫瘍学分野助教授、2002年名古屋市立大学大学院医学研究科放射線医学分野主任教授を経て、2021年4月より現職。医学博士。

陽子線の長所を引き出すスキャニング照射法

 成田記念陽子線センターは2018年、東海地区で民間初の陽子線治療センターとして開設された。今春センター長に就任した芝本雄太医師は、京都大学医学部卒業後、独エッセン大学医学部放射線生物研究所で研鑽。長く名古屋市立大学大学院で放射線医学分野の教授職にあり、開設当初からスーパーバイザーを務めてきた。現在も名古屋市立大学とは親密な交流があり、常時ハイレベルながん医療にアクセスすることができる。

吹き抜けから日差しが降り注ぐ明るいエントランス
吹き抜けから日差しが降り注ぐ明るいエントランス
患者さまの心を癒す、ゆったりした待合コーナー
患者さまの心を癒す、ゆったりした待合コーナー

 陽子線の一番の特徴は、体内の設定した深さで“止まる”ことにあり、腫瘍に照準を合わせれば、そこで最大のエネルギーを放出する。照射後に体を通り抜けてしまう通常のX線やγ線治療と比べれば、正常細胞へのダメージを抑制可能な放射線療法だ。

「さらに当院は、新世代のコンパクト陽子線治療装置を導入。全症例にスキャニング法の照射が可能になりました」(芝本医師)

スキャニング法:腫瘍の立体形状に合わせ、強弱をつけた照射で、きめ細かな線量分布を実現
スキャニング法:腫瘍の立体形状に合わせ、強弱をつけた照射で、きめ細かな線量分布を実現

 スキャニング法とは、細い陽子線ビームに強弱をつけ、腫瘍の複雑な形状を立体的にトレースする先進の照射法だ。病巣を塗りつぶすように狙うから、周辺の神経や機能も十分に温存できる。骨盤内なら、排便・排尿機能、性機能の維持に関わるので、患者のQOLを守る上でも貢献度は高い。

「またスキャニング法なら照射線量を上げる短期治療も容易に実施できます。前立腺がんなら一般に1日2グレイ╳39回のところ、4・3グレイ╳12回で終了でき、通院の負担がさらに軽くなるでしょう」

 そして陽子線機器メーカーとは、1秒間に40グレイ以上を照射する「フラッシュ療法」を研究中だ。軌道にのれば治療はたった1回で済むことになるかもしれない。

地域のニーズに応える放射線医療の形は

「陽子線治療の適した対象は、前立腺がん、頭頸部がん、肺がん/転移、肝臓がん/転移、すい臓がん、肉腫、頭蓋底腫瘍、食道がん、リンパ節転移など。 X線と比べ酸素濃度の低い組織にも適応があり、X線に抵抗性のあるがんでも、効果を発揮する症例が少なくありません。患者さまが納得いくまで相談に応じ、可能性を探ります」

新世代のコンパクト陽子線治療装置の前で、芝本センター長(後列中央)と栁院長(後列右から3人目)を囲む医療スタッフ
新世代のコンパクト陽子線治療装置の前で、芝本センター長(後列中央)と栁院長(後列右から3人目)を囲む医療スタッフ

 本院のもう一つの強みは、系列の成田記念病院との役割分担だ。成田記念病院には、 X線の定位放射線治療と強度変調放射線治療に優れたトモセラピーがある。症例に応じ、共に東海地区の放射線治療のニーズに応える体制を整えてきた。

「がん医療はオーダーメイドの時代です。遺伝子解析、手術、化学療法、免疫療法等といかに協働し、放射線治療の最適解を導き出すか。課題は尽きません」

 地域と共に、がん医療の未来を拓いていく。

INFORMATION

成田記念陽子線センター

〒441-8021
愛知県豊橋市白河町78番地
TEL.0532-33-0033
http://www.meiyokai.or.jp/proton/

出典 : 文春ムック スーパードクターに教わる最新治療2021-2022