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「週刊連載で心が整理され、曲作りにも大きな影響があった」 桑田佳祐がコロナ禍で生んだ“魂”のエッセイと新曲

「週刊連載で心が整理され、曲作りにも大きな影響があった」 桑田佳祐がコロナ禍で生んだ“魂”のエッセイと新曲

新刊『ポップス歌手の耐えられない軽さ』に寄せて

2021/10/07
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 EP(ミニアルバム)「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し」のリリースに、全国アリーナツアー敢行、そして10月8日には書籍『ポップス歌手の耐えられない軽さ』の出版!時節柄、致し方なく続いた長い「自粛期間」を経て、エンターテインメントの巨星が本格始動である。

 怒涛のアウトプットが続く桑田佳祐が、現況と「いま思う本心」を語ってくれた。

桑田佳祐(撮影:倭田宏樹)

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「コロナ禍になってなかなかやる気が出なくて」

 まずは9月15日、6曲入りEP(ミニアルバム)「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し」がリリースと相成った。ソロ作品の発表は4年ぶりのこととなる。

 ちょっと間が空いちゃいましたね。正直なところコロナ禍になってこのかた、なかなかやる気が出なくて参っちゃってましたから。

 皆さんも似たような心境だったと思いますけど、あれほど八方塞がりな状況が続いてしまうと、どうにも気持ちが沈んでしまうのはしかたないところ。たとえが悪いかもしれないけど、「戦時中もこんな感じだったのかな……?」と思わせるような空気でしたものね。

 僕は1956年生まれ。我々のような戦後世代は、高度経済成長とともに育ってバブルを経験して、けっこうずっと「いい時代」を生きてきちゃったんです。ああ、このまま死ぬまで調子よく行けるのかなと思っていたけど、さすがにそれほど甘くはなかったですね。

ミニアルバム「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し」

新曲を聴いて前向きな気持ちになってもらうのが本分

 それで自粛期間中は僕も、けっこう引き篭もって暮らしていたんですけど、あまりに内向きな生活や気分が続くと、いい加減に抵抗したくもなってきます。

 一介のポップス歌手としては、皆さんに新曲を聴いてもらって、多少なりとも前向きな気持ちになってもらうのが本分だとも思い、制作に取りかかった次第でした。

 それにしてもコロナ禍だと、レコーディング一つするにしてもかなり勝手が違って大変でした。現場に来るスタッフ関係者の数は必要最小限にしてもらって、いついかなるときもマスクは着用。ブースで歌ってひと息つくたびマイクを入念に拭いたり……。

 皆さんの仕事や生活の現場でも、きっとそれぞれいろんなご苦労がおありだったことでしょうね。本当にお疲れ様です。

 そんな試行錯誤の末に、何とか作品が出来上がりました。6曲だけの小品集ですけど、精選したものだけを並べられたかなと自負しております。