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連載クローズアップ

「(ニコラス・ケイジの)いまの奥さんは本作に出演してくれていた人」園子温が脱帽した、世界的スターの“プロ意識”

園子温(映画監督)――クローズアップ

「15年ほど前からハリウッドに売りこみをかけていて、それがようやく形になりました。念願のデビュー作です」

 そう語るのは、映画監督の園子温さん。米ハリウッドでの初の監督作品『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』が10月8日(金)に公開される。『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『地獄でなぜ悪い』といった話題作を次々と発表しており、圧倒的なキャリアを誇るが、苦労もあった。

「ハリウッドでは、日本での実績なんて関係ない。だからこそデビューが難しい。作品を選んでいる余裕もないし、あらゆる脚本を読んでは、オーディションを受けました」

園子温監督

 本作は“サムライ・ウエスタン”映画。ネオンサインに飾られた遊郭「サムライタウン」の支配者に、その魔手から逃れた女を連れて戻るように命じられた、悪名だかき銀行強盗のヒーロー。足を踏みいれたのは、いちど入ったら出られない、荒野の中の廃墟「ゴーストランド」だった。

「当初はマカロニウエスタンのような西部劇を目指していたのですが、僕が心筋梗塞で倒れて。撮影場所がメキシコから日本に変わったんです。抵抗はありましたが、アメリカの映画なのだから、日本を舞台にするのも新鮮かもしれない。オリジナルの脚本を半分以上は書きかえて、サムライアクションを持ちこむことにしました。説明するなら、明治維新のなかった世界。江戸時代が現代まで続いていたら、というイメージです」

 主人公のヒーロー役は、アカデミー賞主演男優賞も受賞しているニコラス・ケイジ。

「ニコラスが、日本での撮影を提案してくれたんです。撮影前、2人でゴールデン街で飲んで、がっちりと意気投合しました。それに、彼のいまの奥さんは本作に出演してくれていた人。大事な作品になったんじゃないかな(笑)」

 そんな世界的スターのプロ意識には、監督も脱帽した。

「彼がいたから最後まで乗り切ることができました。自分のシーン以外でも現場に立っていたりするんです。また、作中では原爆や原発のモチーフが登場するのですが、そのために広島の資料館まで行ってきた。すごく心を動かされたようで、『そういうのを映画に取りいれるのは良いことだね』と言っていました」

 ヒーローと相対するのは、用心棒の侍のヤスジロウ。本作でアクション監督も務めた坂口拓が演じている。まさに東洋と西洋の邂逅ともいえる鮮烈なバトルシーンは必見。

「ヒーローのモデルはチャールズ・ブロンソン。ニコラスとも話をしていました。チャンバラ映画に関しては、拓にぜったいの信頼を置いていたので、考えなかった。演出として、五社英雄の映画『人斬り』のパロディーを入れたりはしましたが。立ち回りのシーンは気に入っています」

 ハリウッドでの映画製作は今後も続けていくという。

「まだ一作目。カメラを向けて、モニターにニコラス・ケイジの顔が映ったときが、いちばんハリウッドを実感しましたね。もっとつくっていきたい。ハリウッドで、二作目も三作目も準備しています」

そのしおん/1961年、愛知県生まれ。『俺は園子温だ!』(85年)で監督デビュー。ベルリン国際映画祭フォーラム部門でカリガリ賞と国際批評家連盟賞を受賞した『愛のむきだし』(09年)をはじめ、『冷たい熱帯魚』(10年)、『地獄でなぜ悪い』(13年)、『新宿スワン』(15年)、『アンチポルノ』(17年)など、数多くの作品で国内外の様々の映画賞を受賞。

INFORMATION

映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』
10月8日(金)公開
https://bitters.co.jp/POTG/

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