年を取るにつれて記憶力が悪くなったと感じる人は多いだろう。しかし、効率化のプロとしても知られる経済評論家の勝間和代氏は「それは間違いであると、様々な研究が明らかにしています」という――。
※本稿は、勝間和代『勝間式生き方の知見 お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
自分は記憶力が悪いという暗示をかけない
皆さんに、禁句にしていただきたい言葉があります。それは、「自分は記憶力が悪いから」というセルフ・ハンディキャッピングの言葉です。
セルフ・ハンディキャッピングとは、自分の能力を一定以上落としておくことで、何かに失敗しても傷つきにくくするための一種の暗示です。しかし、自分は記憶力が悪い、と暗示にかけてしまうと、そのことを証明するために覚えたことをわざわざ忘れてしまったり、あるいは忘れていなくてもなかなか思い出せなくなったりします。認知的不協和を起こさないようにするために、無意識のうちにそうしてしまうのです。
思い出す機会がなければ忘れるのが自然
年を取ると記憶力が悪くなると言う人がいますが、実際には、年と記憶力はほとんど関係がないことが様々な研究でわかっています。高齢になるにつれて覚えていることが増えるため、その中から思い出したいことを探すのに時間がかかるだけで、認知症でもない限り、記憶力が衰えることはありません。
また、人の名前が思い出せなくなるとも言われますが、人の名前は基本的に意味がないため、日常的に口にしたり、思い出す機会がなかったりすれば忘れるのが自然です。同窓会で、何十年かぶりに会った同級生の名前をパッと思い出せるほうが変でしょう。ということで、記憶力が悪いというのは思い込みに過ぎないので、「自分は記憶力がいい」と思い直してから、この先を読み進めてください。
記憶力を保つ3つのフェーズ
記憶力というと、単独の能力があるように勘違いしがちですが、集中力と同じで、私たちが頭をうまく使う技術の一つです。記憶は、知識や経験を収集する、次に収集したことを保持する、さらに収集したことを的確な場で出力するという3つのフェーズによって定着し、これが上手に行える人のことを記憶力がいいと言います。記憶力がいいほど、色々な人生の課題を解きやすくなるため、やりたい仕事に就く、収入アップなど、自己実現をしやすくなることは言うまでもないでしょう。