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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

松永太の“非道”はさらに悪辣に 「お前が首を絞めろ」10歳の姉に命じて幼い弟を…

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #76

2021/10/19

genre : ニュース, 社会

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第76回)。

北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

緒方の供述「お母さんのところに連れて行ってあげるね」

「じゃあ、そろそろやれ」

 松永太はそう言い残すと、「片野マンション」(仮名)の和室に入った――。

 1998年5月17日頃の午後のことである。緒方純子と、当時10歳の花奈ちゃん(仮名、以下同。緒方の妹の長女)、13歳の広田清美さんの3人に対して、松永は5歳の佑介くん(緒方の妹の長男)を殺害するよう命じた。

 福岡地裁小倉支部で開かれた公判の判決文(以下、判決文)には、それからの状況について、次のようにある。

〈佑介は洗面所か浴室に閉じ込められていたので、花奈が佑介を呼びに行き、台所の南側和室前まで連れて来た。花奈が、松永に指示されたとおり、佑介に対し、「佑介、お母さんに会いたいね。」と言うと、佑介は嬉しそうに「うん」と答えた。花奈は、「じゃあ、佑介、ここに寝なさい。」と言って、台所の床に仰向けに寝るように指示した。佑介は、これに素直に従い、頭を南側、足を北側に向けて仰向けに寝た。佑介は目を開けていた。花奈は、佑介の左肩辺りにしゃがみ、緒方は、右肩辺りにしゃがんだ。緒方は、電気コードの端を花奈に渡すと、花奈は佑介の首の下に電気コードを1回通し、「お母さんのところに連れて行ってあげるね。」と言った。佑介は電気コードを目にして不思議そうな顔をしていた〉

 これらは緒方の供述をもとにしたものである。なお緒方は公判内で「佑介事件と花奈事件については、他の緒方一家事件に比べて記憶が曖昧であり、自分でもよく思い出せないことに苛立ちを感じている。当時は精神的にかなりまいっていたので、あまり記憶に残っていないのかもしれない」と供述しており、佑介くん事件について、記憶がはっきりしない部分があることを自認したうえで、当時を振り返っている。以下続く。

幼稚園勤務時代の緒方純子(1983年撮影)

5歳の佑介は「ウウッ」と苦しそうな声を出して

〈緒方と花奈は、それぞれ電気コードの先端を持っていたので、それを互いに交換すると、すぐに二人でコードを両側に引っ張って佑介の首を絞めた。甲女(清美さん)はそのとき佑介の足首辺りを軽く持って押さえていた。佑介は「ウウッ」と苦しそうな声を出して、膝を曲げて足をばたつかせた。手を動かしていたかどうかはよく覚えていない。そのとき、甲女の手が佑介の足から外れたので、緒方は、甲女に対し、「ちゃんと押さえんね。」と言ったところ、甲女は、再び佑介の膝の辺りを手で押さえ、身体を覆い被せるようにした。緒方と花奈は電気コードを引っ張り続けた〉