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《写真多数》「♪伊東に行くならハ・ト・ヤ」知ってるようで意外と知らない? 味わい深すぎる“ハトヤホテル”の世界を探索する

2021/10/25

genre : ライフ, , 娯楽

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 ♪伊東に行くならハ・ト・ヤ 電話はヨ・イ・フ・ロ

 1990年代頃まで頻繁に流れていたハトヤのCMを、ご存知の方も多いのではないだろうか。思わずくちずさみたくなる歌詞、頭にこびりつくメロディー、そして腕の中ではねる巨大な魚。誰もが知っているが、行ったことはあるかと聞かれたらどうだろう。

ハトヤのCM画面(公式サイトより)

 私もハトヤのCMは歌える世代だ。昔からぼんやりと存在は知っているが、私にとってハトヤとは有名なだけで、数ある旅館の一つに過ぎず、実際に行ったことも、行ってみようとも思っていなかった。その時までは。

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宇宙的な渡り廊下に目を奪われる

 近年、昭和レトロがブームになっている。若者にとっては新鮮に映り、その時代を生きてきた者にとっては懐かしさに惹かれる。ただ古いだけでなく、特にそれらのデザイン性や佇まいは人々を魅了し、雑誌では取り上げられ、SNSでは拡散されている。

 私をハトヤへと向かわせたのは、レトロなホテルを特集する雑誌の記事だった。登録有形文化財に指定されたクラシカルなホテル、温泉街の老舗旅館、ドライブインに併設された渋い宿など、いつか訪れてみたいとぼんやり眺めていると、すこぶるかっこいい誌面が目に飛び込んできた。

ハトヤホテルの渡り廊下を見てみたい一心で… 写真=あさみん

 なんだこれ? どこだここ?

 それはハトヤホテルの渡り廊下だった。

 腰の高さまで敷き詰められたストライプの赤い絨毯と、アーモンドのような形の連続した窓。ここを渡れば時空を越えられそうな、どこか宇宙的で近未来のような、不思議な空間だ。これを実際に見てみたい。私はその渡り廊下に目を奪われた。

 ハトヤに泊まってみないかとレトロ好きの友人に提案すると、すぐさま目を輝かせ、旅の計画が始まった。CM曲を振り返りながら、記憶の中から知識を引き出す。海底温泉に入りたい! ハトが飛ぶディナーショーが観たい! 三段逆スライド方式ってなに? 誰ひとり行ったことはないが、知っている情報だけで充分盛り上がる。私たちは今まで、ハトヤへ行ってみたかったが、機会がなかっただけなのだ。

いざ「ハトヤ」へ!

 新幹線で熱海駅へ。

熱海駅前。そびえるビルには観光系の巨大看板が目立つ 写真=あさみん

 駅を出ると目の前には、高さの揃ったビルが肩を並べ、巨大なビルの上には観光スポット、リゾートホテル、貸別荘の巨大看板が目につく。ロータリーにはホテルの送迎バスが並び、タクシーが客を待つ。

熱海駅前から続く商店街はレトロな雰囲気たっぷり 写真=あさみん

 アーケードの架かる商店街にはレトロな喫茶店や土産物店が軒を連ね、観光客で賑わっている。