横浜市の旧大口病院で2016年、入院患者3人の点滴に消毒液を混入して殺害した殺人罪などに問われている元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)。10月22日、横浜地裁で裁判員裁判の公判が開かれ、検察は死刑を求刑した。「過干渉って感じだった」と家族が語る、久保木被告と母親の距離感について報じた、「週刊文春」の記事を再公開する。(初出:週刊文春2021年10月21日号、年齢、肩書等は掲載時のまま)。
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「ボーナスもらってから辞めれば」
何気なく発した母親の一言から、程なくして――。
横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院)で2016年、入院患者3人の点滴に消毒液を混入して殺害したとして殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)。10月6日の公判では久保木の父親が出廷したほか、母親の供述調書が読み上げられた。
母親の供述調書によると、久保木は16年5月、「同僚のエプロンが切られていた」と報告。翌6月には電話で「エプロンの事件が怖いから辞めようかな」とも告げていた。母親は退職には賛成したものの、とっさにボーナスのことが頭に浮かび、働き続けるようアドバイスしたという。が、
「久保木は直後の16年7月中旬から、患者の点滴袋に消毒液の混入を繰り返していたとされます。捜査段階では『20人くらいやった』と供述していましたが、殺人罪で立件されたのは、証拠が確実な3人の殺害でした」(社会部記者)
父親への証人尋問で初めて明かされたのは、久保木と母親の距離感だ。
思春期には父親が子育てに関わらなくなったのに対し、母親は「過干渉って感じだった」(父親)。持ち物検査や小遣いのチェックが厳しく、高校時代には反発して本を投げ捨てたこともあったという。久保木は医療事務職を希望していたが、「手に職を付けた方がいい」と言われるまま看護学校に進学。就職後も、母親が毎月のように寮の部屋の掃除に訪れていた。