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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

「両方から引っ張れ」最後の標的も殺され、緒方一家6人は全員がこの世からいなくなった

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #78

2021/11/02

genre : ニュース, 社会

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第78回)。

北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

1998年6月7日、最後の標的となった花奈ちゃん

 1998年6月7日のことだ。

 松永太が企む緒方純子の親族の殲滅。その最後の標的となったのは、緒方の妹の長女である花奈ちゃん(仮名、以下同)だった。

写真はイメージ ©️iStock.com

 

 福岡地裁小倉支部で開かれた公判の判決文(以下、判決文)は、そこでの痛ましい状況を明かす。

〈松永は、6月7日、「片野マンション」(仮名)の洗面所でドアを閉めて花奈と2人で話をした。その話合いの前に、松永が台所で花奈に通電した記憶があるが、はっきりとは覚えていない。松永と花奈は、夕方、2人で洗面所から台所に出て来た。松永は、緒方に対し、「花奈ちゃんもそうすると言っているから。」と言い、同意を求めるように花奈の方を向いたところ、花奈は下を見てうつむき加減に小さくうなずいた。緒方は、松永がこれから花奈を殺すつもりであることを理解したが、松永に対し何の異論も唱えなかった〉

 文面からわかる通り、ここで取り上げた状況は、緒方の供述に基づいたものである。なお、これらのなかには事実認定されなかったものもあることを事前にお断りしておく。判決文は、花奈ちゃん殺害について松永から示唆された際の、緒方の心情にも触れる。

「花奈が死にたいと思うのも無理はない」

〈緒方は、花奈は生きていても辛いだけであり、死にたいと思うのも無理はないと思う一方、花奈はもう少し松永の指示に従って生き残れるように頑張れないのかと腹立たしく思った。緒方は、花奈は学校へも行かせて貰えず、ひどい通電を繰り返されるし、生きていても辛いだけだなどと考え、松永の意向に従い、花奈の殺害を自分でも納得した〉

 そしてここでも、自らの手を汚さない松永の卑劣な姿を緒方は明かす。

〈松永は、「片野マンション」の台所で、緒方と甲女(=広田清美さん。甲女がいつ台所に来たのかは分からない)に対し、「両方から引っ張れ。」と指示した。甲女は嫌そうな顔をした。松永は、緒方と甲女に対し、「今から遣れ。」又は「そろそろ遣れ。」と言って、自らは和室に入った〉

 以下も緒方の供述は続く。

〈花奈は、「片野マンション」の台所の南側和室前付近の床の上に、頭を南側に、足を北側に向け、自分で仰向けに寝た。緒方は、電気コードを用意し、花奈の右肩辺りにしゃがみ、花奈の首の下にコードを1回通した。その際、花奈は、緒方が電気コードを通しやすいように、頭を少し持ち上げた。花奈の顔にタオルを掛けたり、口に布(ガーゼ)を入れたことはない。甲女は花奈の左肩辺りにしゃがんだ。緒方と甲女は持っていた電気コードの先端を互いに交換して手渡した。その間、花奈は目を閉じていた〉