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「スポーツでの暴力は必要悪」ととらえる旧態依然とした考え。
「勝利に導いてくれる指導者を悪く言ってはいけない」という忖度。
「みんな我慢している」といった集団心理です。

実業団の元バスケット選手だった女性コーチが、自分の高校時代の恩師を表現した言葉が非常に的を射ていました。

「私は先生(当時の監督)を、指導者として尊敬できても、指導のやり方に共感はできない」

この言葉には、自分は暴力やパワハラを用いた「指導方法」を絶対に踏襲しないぞという決意がにじんでいます。しかし、そのほかの多くの選手やその家族は私の取材に「やり方はいやだけど、いい監督だと思う」と話しました。つまり、共感できないけれど尊敬、あるいは評価しているため、暴力やパワハラを我慢してしまうのです。この傾向は、2013年の「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」後も長らく続きました。

暴力根絶宣言後も抜本的対策はなかった

暴力根絶宣言がなされましたが、スポーツ界の取り組みは足踏み状態が続きました。なぜならば、指導者の再教育など抜本的な対策や大掛かりなキャンペーンは張られなかったからです。指導者からはこんな声さえ聞こえました。

「今は企業じゃパワハラはダメとか、それはセクハラとか言われちゃうみたいだけど、そんな考え方を教育現場や部活動に持ち込まれたら僕らは子どもを育てられない」

この発言に象徴されるように、多くの指導者は暴力根絶宣言後も暴力を我慢していただけでした。したがって、問題は表出し続けました。

スポーツハラスメントへの意識が向上している

2018年には耳目を集める事件が多発しました。3月に五輪4連覇中だった女子レスリング選手が日本代表強化部長のパワハラを訴えると、5月には日本大学アメフト部の悪質タックル問題、8月にはリオ五輪代表だった女子体操選手(当時18歳)への男性コーチによる暴力が明るみになっています。当時盛んになった#MeToo運動もあって、当事者である選手やその家族のスポーツハラスメントに対する意識向上に繋がりました。

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