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しかし、女児の保護者は警察に被害届を提出しました。周囲から「たった一発叩かれたくらいで大げさだ」と反感を買いましたが、女児も保護者も監督の暴力行為を許しませんでした。

私は、母親の「もうこんなことを我慢する時代ではない」という言葉に、スポーツハラスメントに対する意識の向上を感じました。

指導者も被害者かもしれない

この監督は2020年10月、当該地区の検察庁によって暴行罪で罰金10万円の略式命令を受けました。その科料が軽いか重いかはさておき、もうスポーツの指導ができなくなりました。

私はこの事件にかかわる機関をいくつか取材しましたが、いずれの関係者も事件を矮小化しようとしているように感じられました。そのような姿勢が学校や競技団体にある限り、子どもや保護者は指導現場で起きたハラスメントを我慢してしまいます。情報をオープンにし、両者の話を丁寧に聞き取る機関が必要です。

暴力は許されないこととはいえ、犯してしまった指導者も見方を変えれば、暴力を許してきた社会のブラックホールに飲み込まれた被害者かもしれません。暴力を受けた当事者や家族が我慢しないで事実を明らかにしていくことは、未来の指導者たちを守ることになると私は考えています。尊敬され、共感もされる指導者人生を歩んでもらうためにも「あなたの指導はおかしい」と私たちが声を上げることが必要なのです。

※「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」:2013年1月以降に発覚した、大阪市立高校バスケットボール部員が顧問の暴力等を苦に自死した事件及び、女子柔道日本代表監督による選手への暴力発覚を機に、同年4月に日本体育協会(現・日本スポーツ協会)、日本オリンピック委員会、日本障害者スポーツ協会、全国高等学校体育連盟、日本中学校体育連盟の5団体が採択。宣言文には「身体的制裁、言葉や態度による人格の否定、脅迫、威圧、いじめや嫌がらせ、さらに、セクシュアルハラスメントなど、これらの暴力行為は、スポーツの価値を否定し、私たちのスポーツそのものを危機にさらす」とある。

島沢 優子(しまざわ・ゆうこ)
スポーツジャーナリスト
筑波大学卒業後、英国留学等を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年フリーに。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実』(朝日新聞出版)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)等著書多数。『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子/小学館新書)を企画構成。「東洋経済オンラインアワード2020」MVP受賞。日本バスケットボール協会インテグリティ委員。沖縄県部活動等の在り方に関する方針検討委員会コーディネーター。

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