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source : 文藝春秋 2016年12月号

genre : エンタメ, ライフスタイル, 読書

自分自身の恋愛を私小説の手法で書いてみよう

 私は純文学も大衆小説も両方書ける質なんです、良い悪いではなくて。だからデビュー作があんな批判を受けなかったら、早くに純文学へのこだわりを捨てていたかもしれません。大衆小説の仕事がいっぱい来たらそっちを書きたくなるし、そうやって書いた小説が売れたら、大衆作家になっていったと思います。

 私小説とは何なのか、私は『花芯』が批判されたのを機に研究しました。すると確かに、人間の内部の暗黒に潜むものを見極めたい私には、私小説的な感性と発想があるとわかってきました。

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 そこで初めて、自分自身の恋愛を私小説の手法で書いてみようと決め、『夏の終り』という作品を書きました。『新潮』に5年ぶりに載ったこの私小説は、女流文学賞をいただきました。

 文芸誌に書けなかった5年間、私は週刊誌や婦人雑誌に恋愛小説などを書いて食べていました。斎藤十一さんは、「あんなところに書くようになったら、ますます使えない」と言いながら、全部読んでいてくれたようです。部下の方から、「斎藤はあなたを見捨ててませんよ」と聞いていました。だいぶ後に何かのパーティーでお会いしたとき、

「もう何も言うことはないよ。好きにおやり」

 と斎藤さんは言ってくださった。お目にかかったのは、それが最後。平成12年に亡くなって、お葬式に出た作家は、山崎豊子さんと私くらいじゃなかったかしら。ほかの作家は、みんな死んじゃってたからね(笑)。