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小室さんに見透かされ皇室へ強い姿勢を取らせた秋篠宮さまの“混乱した心中”《父の言葉が説得力を持たない理由》

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2021/11/19

 秋篠宮家の長女・眞子さんと小室圭さんは、結婚後ついにニューヨークでの生活を始めました。ノンフィクション作家の保阪正康氏による「象徴天皇制の『聖』と『俗』」(「文藝春秋」2021年12月号)を特別に全文公開します。(全2回の2回目/前編から続く)

10月26日、記者会見に臨む小室眞子さん ©JMPA

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皇族が聖なる存在として認識された大きな理由

 天皇家がこの国の歴史に存続しえた理由の一端は、「俗」である我々大衆とは違った存在、つまり天皇が俗世からかけ離れた高みにおられる「聖」なる存在として畏敬の念をもって見られてきたことです。現世の中に別な次元を見ていたのです。

 日本人は「天皇家の方々は、社会で生きる自分たちとは違う次元で生きている」ととらえます。この国の中心軸に聖なる存在もいることに思いを馳せることで、俗世であくせくして生きる自分とは異なる、精神的な文化空間を得てきたのです。

10月26日、赤坂御用地の秋篠宮邸を出発する眞子さんを見送られる秋篠宮ご夫妻と佳子さま ©JMPA

 皇族が聖なる存在として認識された大きな理由には、経済生産活動に一切、触れてこなかったことがありました。人は労働し、生産し、賃金を稼いで生きています。経済生産活動の中にいれば、当然、競争もあれば争いごともある。皇族は、そんな俗な世界とは無縁の世界におられるからこそ、尊崇の対象になってきました。

 秋篠宮が山階鳥類研究所の総裁に就かれ、眞子さまが日本テニス協会の名誉総裁に就かれる。このように皇族たちが公務として公益財団法人などの総裁職に就くのは、経済生産活動には触れないための先人の知恵なのだと思います。しかし一方で、小室さんはというと米国留学をして弁護士になろうとしている。弁護士は世俗の係争案件を扱うのが主な職務であり、いわば争いごとの中心に身を置く仕事です。

 今上天皇の妹黒田清子さんの夫慶樹さんは東京都の職員、高円宮家の典子さんの夫である千家国麿さんは、出雲大社の宮司を務めています。このように女性皇族の結婚相手の職歴を振り返ってみても、弁護士はかなり異質な印象です。

10月26日に婚姻届を提出し、記者会見に臨む小室圭さんと眞子さん ©JMPA

“儀式はやってもやらなくてもいい”悪しき前例

 もう一つ、天皇家が聖なる存在であり続けたのは、儀式や宮中祭祀をたゆまず行ってきたからでした。儀式・祭祀において、天皇が天照大御神に拝礼し、国家や国民の安寧を祈ることは、まさに聖なる存在に託された行為でした。しかし、今回の眞子さんの結婚では、納采の儀や告期の儀など結婚に伴う一連の儀式が行われないばかりか、朝見の儀のように天皇が執り行う皇籍離脱のための儀式さえも中止することになりました。秋篠宮が「皇室としては類例を見ない結婚」と言った通り、これは戦後初めてのことです。

 このことの重大性に皇室関係者が気づいているかどうか。儀式はやってもやらなくてもいい。そんな悪しき前例を作ってしまったわけです。儀式とはそんな軽いものだったのでしょうか。皇室が「聖」たりえるために長いあいだ守ってきた伝統は放擲されてしまいました。