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2021/11/22

A子さんの手記「衷心よりお詫び申し上げます」

 死刑執行2日後の9月16日、遺体は大阪市大正区にある火葬場で荼毘にふされた。参列者によれば、A子さんは宅間の遺骨を骨壺に入るだけでなく、すべて持ち帰ったという。また、葬儀代金の25万5800円は、彼女が支払っている。

 同年9月19日に行われたアムネスティ・インターナショナル日本などが主催する『死刑執行に対する抗議集会』に、A子さんは手記を寄せている。

〈ここに生前の夫が行ないました取り返しのつかない大罪に、衷心よりお詫び申し上げます。また、昨年末の入籍の際には、世間をお騒がせし、恐らくは、多くの方々に大変に不快な思いをお掛けしてしまったであろうことを、重ねてお詫び致します。

 本来ならば、親族となった私は、夫に代わり、被害者、及び、遺族の皆様方の前には直々に参上致し、心からのお詫びを申し上げなければならないところなのですが、死刑囚と婚姻したという、非常識とも取られてしまうような立場である私のような者が、未だ心の深い傷が癒えぬままでおられるであろうご遺族の皆様方の前に参上するのは、更にお心の傷を抉ってしまうばかりか、とも思い、静かに時間の経過を待つことだけしか出来ないままに日々過ごして居りました。(中略)

 夫の死刑執行の知らせを受けたことにつきましては、今は、ただただ、「許されるのなら、せめてもう少しだけ、彼と対話を続けるための時間が欲しかった」との思いで、自らの力不足を悔やむ以外に術が見つからないような心境です〉(月刊『創』2004年11月号より)

 それから17年が経つ。現在の心境を伺えないかと、戸谷弁護士を通じてA子さんに取材を申し込んだが、「申し訳ありませんが、表に出ることは遠慮させていただきたい」との答えが返ってきた。

 果たして、彼女は、自ら切望した死刑囚との獄中結婚を叶えた先に、何を見たのだろう。

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