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納棺式で遺族に「今日はたくさん抱っこしてあげましょう」突然死した2歳児はお昼寝をしているみたいで…

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「こんな小さな子を棺に入れるなんて…」突然死した2歳児の遺族に納棺師が提案したこと

亡き人を悼み送る「納棺師」は、どのように遺族に寄り添っているのか。納棺師の大森あきこさんの著書『最後に「ありがとう」と言えたなら』(新潮社)から一部を紹介する――。

写真=iStock.com/RobertHoetink ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RobertHoetink

「何で? 何で?」お母さんに突き付けられた理不尽な現実

小さな子供の納棺は何度経験しても心が痛くなります。

ハナちゃんは2歳の女の子。昨日までお父さん、お母さんに大好きな絵本を読んでもらってかわいい笑顔を見せたり、お父さんの脱いだ洋服を洗濯機までトコトコ歩いて片付けたりしていました。

しかし、突然死は、家族からハナちゃんを無理やりちぎり取りました。

家に着くと奥からお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえます。本当のことを言うと、中に入るのが怖くてしかたがありません。私にできることがあるのかなと不安で足がすくみます。

でもどんなに入るのが怖くても、葬儀会社の担当者さんと打ち合わせをした後、ご遺体のそばへお邪魔することになります。

部屋には小さな布団と、絵本や赤や黄色のぬいぐるみやおもちゃが綺麗に並べられた棚。お布団の中には小さな女の子が寝ています。小さな手は握られて腕がスッと伸び、下着の下の小さな胸に刻まれた解剖の跡が見えています。早く隠してあげたい。

お母さんは手や足をさすりながら、「なんで? なんで?」と涙を流しながら問い続けます。

固くなった唇以外はまるでお昼寝をしているよう

ここで声をかけるのが正しいのかなんてわかりません。

ただ、私たちの仕事が小さなお子さんやご両親に、何かできることがあると信じるしかないのです。

「お母さん、今日はたくさんハナちゃんを抱っこしてあげましょう。ハナちゃんの一番好きなお洋服と、お写真を用意してもらえますか?」

お母さんが虚ろな顔でうなずき、ハナちゃんから離れました。

小さな体には、死因を調べるためについた解剖の傷があります。手当てができるのは今しかありません。

みなさんにいったんお部屋を出てもらい、傷の確認です。