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2021/11/20

DH制導入には反対する理由

 今年6月30日のヤンキース戦。マドン監督は大谷を「1番・投手」で起用するが、1回裏の先発マウンドに上がった大谷は大乱調。1回もたず、2安打54死球の7失点でベンチに下がった。

 DHを使って野手を9人並べたヤンキースと、投手を打順に組み込み、チャンスの場面では代打要員を差配するエンゼルスとでは、戦術面で大きな差が出るのは当然だ。

 だが試合は、8回終了時点で8―4とヤンキースがリードしていたものの、エンゼルスが9回に7得点をあげ、逆転勝利を果たす。

 この試合を終えたマドン監督は、いつになく満足そうな表情だった。

「これがナ・リーグの試合だよ。私は(DH制のない)ナ・リーグの野球が好きだ。なぜならチーム全員がこの勝利に関わっていたし、全ての救援投手が出場可能だった。投手が打席に立つことを面白くないと思わないで欲しい」

 近年、ナ・リーグでも、DH制導入の議論が繰り返されているが、マドン監督は反対の立場をとる。DH制が野球に必ずしもプラスに働くとは限らないと考え、むしろ9人野球を好む。だからこそ大谷の投打同時出場にも柔軟に対応できているのだ。

 こうした固定観念に縛られない思考には、対話重視で選手と密に会話を重ねることが欠かせない。

 今春キャンプでマドン監督は、大谷とのコミュニケーションが最も重要だと強調していた。起用法を決めるにも大谷の感覚を最優先していた。

「ショウヘイが自分の体調をどう考えているのか。その点を完全にクリアな状況にしなければならない。彼自身がどう思うのか、何ができるのか。聞き取りを重ねた上で、我々が決断をする。彼を観察して、話して、聞いて、そしてベストな判断をするということだ。彼とコミュニケーションをとり続けていく必要がある」

 マドン監督によれば、大谷の英語力は年々上がっているものの、基本的に水原一平通訳を通じて、大谷の状態をチェックしているという。

MVPを受賞した大谷翔平選手 ©共同通信社

 シーズンに入ってからも、マドン監督の“ショウヘイファースト”の姿勢に変わりはなかった。投打の二刀流で起用する際、まず大谷の意志と肉体のコンディションを確認する。

 今季から大谷は、右腕にかかる負荷や疲労の蓄積具合を計測するバンドを巻いて練習することで、客観的なデータを得られている。

 それでもマドン監督は、データよりも大谷との対話を最優先する。

 数値ではなく、コミュニケーションが、最も重要な判断材料と考えているからだ。米アリゾナ州で行われていた今春のオープン戦では、水原通訳を含めてベンチで3人が数十分にわたり話し込む姿があった。

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