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2021/11/20

どの監督も「皆やり方だったり、色が違う」

 一方の大谷も、就任2年目のマドン監督との話し合いに積極的な姿勢を見せている。

「今まで一緒にやってきた監督は、どの方も素晴らしかったですけど、皆やり方だったり、色が違う。(マドン監督について)去年1年だけでは正直、分からないことが多いので、今年は色々話しながら、楽しめたらと思っています」

 マドン監督の指揮下でプレーした日本人メジャーリーガーも少なくない。元ヤクルトで、BCリーグ・福島レッドホープス監督の岩村明憲氏(42)は、レイズ時代にマドン監督の下でプレーし、彼の考え方や人柄をよく知る一人だ。

「当時から監督室のドアは開かれていることが多く、そこで会話する機会も多かった。監督の追求する野球を僕たち選手もやりたかったので、なぜ、あの場面でエンドランだったのか、あの作戦の意味を教えてくれなどと、野球の戦術の話をたくさんしました。レイズ、カブスの監督経験が今年、また来年、生きてくることでしょう。大谷選手に対しても、いろんな起用法で、彼の長所をもっともっと伸ばす監督になると思う」

2021年9月20日、MLB米大リーグ、アストロズ戦1回、ベンチでの大谷翔平選手 ©ロイター=共同通信社)

打撃不振で40分以上も熱血指導

 日本時代から度々ケガに悩まされた大谷にとって、「リアル二刀流」や登板日のフル出場などは、これまで考えにくいことだった。投手としてのコンディションを保つため、先発登板の前後の一日は、基本的に欠場し、体の負担や故障のリスクを回避することを優先してきた。しかし、昨年監督に就任したマドン氏はこうした決まり事を次々打ち破っていた。

「彼の運動能力を解放し、ケガを過度に心配しないことが重要だ。こちらから練習の制限やガイドラインというものは設けたくない。彼ときちんと話しあって、身体がどういう状況なのかを尋ねたいし、あらゆる可能性を考えている」

 昨年、投打で結果が出なくても大谷の潜在能力を信じ、二刀流継続の背中を押してきた。

「チャンスを与えれば、彼はこの世代でベストプレーヤーの一人になれる。今までもメジャーで最も高いレベルで素晴らしいボールを投げ、素晴らしいスイングを見せている。彼に必要なのは故障しないことと、そしてチャンスだ。彼は(才能に)恵まれているし、多くの選手にとって不可能なことを可能にする力がある」

 マドン監督が大谷を評価するのは彼の才能と能力だけではない。練習に対する真摯な姿勢、明るく正直な人間性にも多大な信頼を寄せる。だからこそマドン監督は大谷の裁量に任せる形を取る。

 今季から大谷は他の選手とは別のメニューで調整を任されているのもその一つだ。試合前におこなう投手の全体練習には参加せず、打者としても屋外でのフリー打撃は行わない。室内の打撃ケージで短時間の練習で済ませている。

 今でこそ、調整の時間や方法は大谷に任されているが、昨年、マドン監督は、大谷の練習内容に口を出すこともあった。

 打撃不振に陥った8月17日、本拠地エンゼルスタジアムで大谷は珍しく特打を行った。マドン監督はその様子を見守り、身ぶり手ぶりでアドバイスを送る。40分以上にわたる熱血指導だった。

 だが、事態は好転しなかった。

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