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「あんまりイキがるとマジで殺るぞ!」なぜ暴力団幹部2人は歌舞伎町で中国人マフィアに銃撃されたのか

警察を震撼させた「パリジェンヌ事件」の顛末

2021/11/21

genre : ニュース, 社会

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 2002年9月27日、新宿区歌舞伎町の風林会館1階にある喫茶店“パリジェンヌ”で、住吉会系幸平一家の幹部2人が、男数人に拳銃で襲撃されるという事件が起きた。被害者は幸平一家の幹部、X(34)とY(36)。時刻は19時前、人が繰り出し始めた夜の街、歌舞伎町は一時騒然となった。

「パリジェンヌ事件」と呼ばれるこの事件は、世間一般にはあまり有名ではないが、警察関係者には広く知られている。警視庁に外国人犯罪や暴力団組織を本格的に取り締まる「組織犯罪対策部」が設置されるきっかけとなったからだ。事件の概要や当時の歌舞伎町について、当時の警察関係者に話を聞くことができた。

カラオケが原因で中国人マフィアグループといさかいに

 その日、店の奥まった席でXとYは、中国人マフィアらを待っていた。2人は、正面入り口の自動ドアが開く度に鋭い視線を向け、相当に緊張していたらしい。当時のパリジェンヌは古びた純喫茶風の作りで、どこかうす暗かった。Xらが奥の席を取ったのは、中国人たちをいち早く確認して、彼らの動きに備えるためであったという。

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 前日深夜から、新宿のスナックで飲んでいたXら3人は、中国人マフィア6人からなるグループといさかいになった。原因はカラオケだ。双方、酔っていたためいさかいは殴り合いに発展。店側が必死に割って入りひとまず収まったが、双方けが人が出た。謝罪や治療費をめぐり、店内は再び不穏な空気に包まれていた。

 ささいな出来事でのいさかいとはいえ、組の看板を背負っている暴力団幹部としては、中国人マフィアを相手に引きさがることはできない。それにここは組のシマ内だ。自分たちのシマで、中国人マフィアに好き勝手をされていいわけがない。「組のメンツもあれば、幹部としての沽券もある。勢いづく中国人マフィアをこの際、叩き潰さなければ、そんな思いもあったのだろう」と警察関係者Aはいう。

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あんまりイキがるとマジで殺るぞ!

 店の経営者が、これ以上騒ぎを大きくしたら警察を呼ぶと受話器を握ったため、双方、改めて話し合うことになった。場所は、地元の暴力団関係者がたむろする店として知られていたパリジェンヌだ。Xらもよく使っていた店だが、中国人の顔を見ることが多くなり、仲間内では、「我が物顔にのさばる中国人に我慢ならない」という声が大きくなっていたらしい。

 19時前、中国人マフィアら5人ほどが、ずかずかと店内に入ってきた。前出の警察関係者Aによると、Yはこの時、一瞬相手の数が多すぎると思ったようだという。だが店には他の客も多く、5対2でも大ごとにはなるまいと思い直したらしい。中国人マフィアは迷うことなく一直線に2人のもとに向かい、空いていた隣のテーブルについた。通路を挟んで、Xとリーダーらしき中国人が低い声で話し始めた。