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「これはむちゃくちゃ大変やないか」サイボウズ社長が夫婦別姓の訴訟を起こした納得の理由

そして2021年6月23日。僕たちの裁判は最高裁で判断されることなく、別の夫婦別姓裁判とまとめるようなかたちで上告棄却。何もできないまま、敗訴が確定しました。僕たちの切実な思いは、あっさりと退けられてしまったのです。

作花先生曰く、こういったかたちで上告棄却されるのはほとんど前例がないとのこと。まるで、軽くあしらわれるように訴えが退けられるなんて……。「そんなことがあるんだ」と呆然としたものです。

深く考えずに妻の姓へ

さて、時計の針を戻しましょう。そもそも、なぜ僕が結婚時に妻の姓に変えたかについてお話ししたいと思います。といっても理由はシンプルで、妻が希望したからです。

「私、名字、変えたくないんだけど」
「えっ!」
「女性が改姓するのが当たり前って風潮はどうかと思うんだよね」
「うーん」

僕自身、当時は妻が自分の姓になるものとばかり思い込んでいました。正確にいうと、そのことについて考えたこともなかった。しかも、結婚しようという話になってから突然そう言われたので、やや面食らいました。

そこで、新卒で入社したパナソニックで机を並べていた女性の同僚や先輩、サイボウズの社員たちのことを思い浮かべてみました。

結婚をきっかけに改姓した女性たちは旧姓を名乗り、ふつうに仕事をしている。とくに不満を聞いたこともない。自分の場合、「青野」の名前で仕事さえできれば困らない。――よし、たいした問題にはならないだろう。

そんな軽い気持ちで「じゃあ、僕が名前を変えるわ」と了承しました。

ときは2001年。いまよりもさらに女性側の名字を選ぶ夫婦は少ない時代でしたが、そこはあまり気にならなかった。愛する妻のため……というとかっこいいのですが、正直なところ、深く考えてはいなかったのです。

改姓の苦痛は一時的なものではなかった

ところが婚姻届を出して以降、じわじわと「これはむちゃくちゃ大変やないか」と気づきます。

まずは改姓の手続き。健康保険証、運転免許証。そして、免許証を証明書としている銀行口座、証券口座、クレジットカード、携帯電話、飛行機のマイレージカードから近所の図書館の会員カードまで。さらには、各種ウェブサービスに登録している情報の変更……。