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「これはむちゃくちゃ大変やないか」サイボウズ社長が夫婦別姓の訴訟を起こした納得の理由

膨大な作業が発生し、どこまで何を変えたか整理するのもひと苦労でした。旧姓でつくった銀行口座を結婚後に解約するときは、戸籍謄本が必要だと言われ、「解約するだけなのに謄本がいるの⁉」と腹が立ったこともあります。しかも、そうした作業には平日に休みを取ったり、あるいは貴重な休日をつぶしたりしなければいけないので余計イライラも増すというもの。根が技術者で合理主義な僕は、不毛な時間にストレスを感じていました。

さらに厄介なのが、それが「結婚直後のみの苦痛」ではなく「ずっと続く」ということでしょう。サイボウズは海外にも拠点があり、僕も海外出張の機会が少なくありません。現地のメンバーやビジネスをする相手が、僕のホテルの予約を取ってくれるのですが、うっかり「AONO」名で取ってしまうと話がややこしくなるから、さあ大変。ホテルに到着してフロントでパスポートを見せたら、

「ニシバタさま? 予約がありませんね」
「アオノではどうですか?」
「あります。でもアナタ、本当にアオノさんですか? パスポート名と違いますが?」

……といったトラブルに発展していくわけです。移動と仕事で疲れ切っているときに、なんと無意味な会話。こうした事態を防ぐため、近年は20年以上前につくった青野姓時代のパスポートを持ち歩いて自らの証明書としています。これも、姓を変えていなければする必要のない工夫です。

アイデンティティ喪失という問題もある

仕事上の不具合はほかにも無数にありました。会社では「青野さん」と呼ばれ、「青野」としてメディアに出演するのに、給与明細は「西端」。一部の契約は戸籍名でなければならず、ハンコは常に2つ持ちです。毎度「これはどっちを使えばいいのか?」と調べるのも面倒ですし、仕事上の人格として一貫性もない。もし間違ったら差し戻されて書類を作り直さないといけない。名前の使い分けが非常に面倒であるのはもちろん、人事部や経理部や法務部や情報システム部にも「2つの名前を管理する」という余計な仕事が増えていることに、経営者としてあらためて気づきました。