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連載この鉄道がすごい

ひさしぶりに誕生した“ブルートレイン”「WEST EXPRESS 銀河」に乗ってきた

ひさしぶりに誕生した“ブルートレイン”「WEST EXPRESS 銀河」に乗ってきた

「ファーストシート」での紀南ツアー体験記

2021/11/28

genre : ライフ,

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◆2021年9月6日 20時55分

 動きのなかった京都駅31番線に電車がやってきた。濃紺色だ。この電車は2020年から、「旅立ちの場所」に加わった新顔だ。「WEST EXPRESS 銀河」という観光タイプの列車である。

ブルートレインのリスペクトが好きだ

 車体色は瑠璃紺色といって、仏の髪の色や経典にあしらわれる色だという。細い帯は長距離の旅のイメージ。帯は客車の飾りの定番といえば身も蓋もないけれど、濃いブルーの車体に銀帯といえば、かつて東京・大阪と九州・札幌を結んだ夜行列車「ブルートレイン」の客車に通じる塗装だ。つまり、ブルトレブーム世代の私には懐かしい色。デザイナーの狙いもそこだろう。

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31番のりばに「WEST EXPRESS 銀河」入線

 運転席まわりはスラントノーズといって、下から上へ向かってゆるやかな後退角がある。控えめなスピード感を持つ表情だ。ピカピカの新車に見えて、じつは中古車。1980年に作られて、京阪神の「新快速」に投入された117系という電車だ。

「新快速」は国鉄時代に設定され、JR西日本も継承する俊足列車だ。並行する私鉄とスピードや座席サービスを競うため、当初はワンランク上の急行用の電車を使っていた。ただし急行料金は不要、しかも複々線区間で有料料金の特急列車も追い越したという逸話もある。京阪神の鉄道はそのくらいスピード競争が激しかった。

両側の背もたれを倒すとベッドになる

時期によって行先が変わる

 その新快速の競争力を高めるために導入した新型車両が117系だ。年月を経て、高性能な後輩車両に晴れ舞台を譲り、ローカル区間へ転用されていった。そして製造から40年。JR西日本の新たな観光列車に抜擢され、室内外を大改装した。スピードではライバルに勝てないけれど、ゆっくり走る列車ならまだまだ使える。外観は当時の面影を残しているけれども、室内は新品そのものだ。引退間近の車両をリフォームして観光列車に仕立てる。観光列車ブームの定番だ。

 新快速117系あらため「WEST EXPRESS 銀河」は時期によって行先が変わる。デビューしたばかりの2020年9月から11月までは山陰方面、次に山陽方面、また山陰に戻った。2021年7月から12月までは紀南方面で、2022年は1月から3月まで山陽コースになる。12月25~26日は特別便で、初めて瀬戸大橋を渡り、JR四国に乗り入れて琴平まで往復する予定だ。2021年11月23日現在、予約サイトには「残席僅か」と表示されている。