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「調子のいい阿炎とやりたい」照ノ富士が朝稽古中に語っていた本音《“元安美錦”安治川親方の11月場所総評》

けっぱれ! 大相撲――2021年11月場所

note

 九州は福岡で2年振りの九州場所開催。

 通常であれば本場所2週間前の番付発表から福岡に乗り込み、稽古を重ね本場所に挑みます。今場所は本場所1週間程前から各部屋の福岡乗り込みが始まりました。

 先場所同様に行動制限はあり、13日目まで外出は禁止でしたが環境が変わるだけでもありがたいものです。

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今場所で注目していたのは……

 今場所注目は、もちろん新横綱で優勝した照ノ富士。首の状態が心配ですが九州場所での優勝経験がある大関貴景勝。安定した成績を残す関脇御嶽海が今場所の中心になると思っていました。

 新三役の霧馬山に、三役返り咲きを狙う大栄翔に若隆景。熊本県出身の大関正代に佐田の海、鹿児島県出身の関脇明生、宮崎県出身の琴恵光、福岡県出身松鳳山などのご当所出身力士の活躍、幕内に戻ってきた阿炎は体も一回り大きくなり期待ができるのではないかと見ていました。

 私の九州場所での思い出はたくさんあります。幕下筆頭で十両昇進を決めた場所が九州場所でした。場所後に新十両会見をしたのを今でも思い出しますね。

元安美錦(安治川親方) ©文藝春秋

 幕内で初日から7連敗、8日目に初白星をあげ、その後7連敗。1勝14敗という悔しい思い出がありますが、初日、横綱白鵬に勝ち殊勲賞を受賞したことも。

 良い思い出も悔しい思い出もたくさんありますが、一番の思い出は37歳でアキレス腱を断裂し十両まで番付を下げたものの、回復し、幕内に戻ってきたのが九州場所でした。千秋楽で勝ち越して三賞までいただくことができた九州場所は、鮮明に覚えています。この話は長くなるのでまたの機会に(笑)。

白鵬の引退に思うこと

 このことに触れないわけにはいきません。横綱白鵬が9月場所後に引退しました。白鵬が入門した宮城野部屋は伊勢ケ濱部屋と部屋が近く、よく出稽古に行っていたため、白鵬の体が細かった時から知っています。本当によく稽古していましたね。あっという間に強くなりました。

 横綱に上がってからは同じ一門ということもあり、太刀持ちをしたりしましたが、どうやって攻略しようか常に考えていました。

 長い間、横綱を務めあげたことは「本当にお疲れ様でした」という言葉しかないですね。

 九州場所の話に戻ると、食事も楽しみでしたね。

 魚がおいしい時期でふぐにアラ、ヤリイカもおいしいですね。水炊きにもつ鍋、ラーメンにうどんなど、書いていてお腹が鳴りました(笑)。