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ところが、多くの整形外科医は話もそこそこに聞いて、神経所見も理学所見も取らずにMRIなどの画像をとって「診断」してしまいます。目に見えるものは説得力があるので、患者さんも「なるほど!」と思ってしまいがちです。

筋肉の深い部分が痛んでいるかどうかは画像ではわかりません。神経所見や理学所見を取らないとどうしようもないのです。首や肩をかばって腰に痛みが出ているケースもあり、画像診断だけで慢性腰痛の真の原因にたどり着けるはずもありません。そもそも話を聞かないと一次性の腰痛か二次性の腰痛かもわかりません。基本中の基本です。

「手当て」と言う通り正しい診断は触ってナンボです。うちのペインクリニック内科では初診時の問診票は20ページですし、初診に2時間かけてじっくり話を聞き、ようじで刺したり、保冷パックで反応を見たり、あちこちたたいたり触ったりして、真の原因を探っています。

患者さんのそれまでの人生、数十年の生活習慣の積み重ねが現在の腰痛につながるのですから、そんなに簡単に真の原因はわかりません。このプロセスを経ずに、MRIのみで確定診断し、手術で患部を切って、「はい、治りました」というのは慢性腰痛に対してはあまりに一面的な処置ではないでしょうか。

慢性の腰痛の治療を誤ると、寝たきりリスクが高まる

整形外科医は、ケガや事故などで負傷した腰椎そのものを治す急性の外科的手術の専門家です。しかし必ずしも慢性痛の専門家ではありません。

慢性腰痛の8割は筋肉のコリに関わりがありますし、じっくり調べる必要のある薬物療法、ましてや心理社会的な評価や治療は教わってもいないし、超面倒なため得意ではないのです。

長引く腰痛にもかかわらず急性腰痛のような対処をしたり、真の原因分析に至らなかったり、放置したりすると、腰痛ばかりではなく、ひざ痛、下肢痛を招き、寝たきりリスクが高まります。

寝たきりのリスクについては、私が著者と対談した書籍『道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる』(アスコム)の第6章をご参照ください。