今回の展覧会には、1987年3月にネパール国ご訪問の折に撮影された写真も展示された。水汲みに集まった女性と子供の姿を収めたものだ。
〈ヒマラヤの山々を一望するポカラ郊外の山歩きの際に、水汲みをする人々に出会いました。蛇口から出るほんのわずかな水を求めて多くの女性や子供たちが集まっていたのです。『この水で持って来た甕(かめ)を満たすのにどのくらい時間がかかるのだろうか』。『女性や子供が多いな』。『水汲みというのもたいへんな仕事だな』。(略)この光景こそ、私が水問題を考えるときにいつも脳裏に浮かぶものであり、私の取り組みの原点となっているように思います〉(徳仁親王『水運史から世界の水へ』)
このとき、カメラから目を離されて、感慨深そうな表情をされていたのが印象的だったと随行員の1人は振り返っている。
雅子さまはSDGsにご関心が
最近は、雅子さまも水問題に一層ご関心を寄せられている。
2月3日には、両陛下おそろいで「『水と文化』国際シンポジウム―水の遺跡から地域の発展を考える―」(東京・港区)にご出席された。
主催した政策研究大学院大学の田中明彦学長はこう話す。
「両陛下にうかがったところでは、特にアンコール遺跡群についての講演を興味深く聞かれたそうです。アンコールワットの中で水がどのように配置されているのかとか、その地域の灌漑とどのように繋がっているかについてのカンボジアの文化芸術大臣の報告でした。陛下は『水とか遺跡についても、それぞれ大変興味深い歴史があるのですね』とお話しになっていました。
雅子さまは、『持続可能な開発目標(SDGs)』にもご関心があるようです。うちの大学の授業は、開発途上国の官僚向けの公共政策なので、そのほとんどが持続可能な開発目標の取り組みに関係していると説明させていただきました」
パネリストとの歓談は30分の予定だったが、話ははずみ1時間にも及んだ。
実は、環境問題に関しては、雅子さまも外務省時代に地球環境問題にかかわったことがあり、ご関心のあるテーマの1つでもある。
2003年からご療養生活に入られ、治療の一環として選ばれたのは国連大学(東京・渋谷区)での聴講だったが、05年に国連大学創立30周年の公開フォーラムにご夫妻で出席されて以降、「人道支援における日本のレシピ」「国際衛生年フォローアップ会議」などのプログラムを聴講されていた。