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2021/12/11

「人格否定発言」後に「公務の先が見えない」

 今では「水問題」を公務のひとつとすることが浸透しつつあるが、「人格否定発言」(2004年5月)後しばらくは、陛下が「時代に即した新しい公務」の必要性を訴えても、宮内庁からはなかなか理解が得られない時期が続いた。

2004年10月20日、美智子さまの誕生日をお祝いする夕食会のため、皇居を訪れられた ©JMPA

 2005年5月には、公務の分野の1つとして、「環境問題」を挙げられたが、私的なご研究を公務に繋げることは、上皇陛下もなさってこなかったため、当時の宮内庁幹部には、福祉や被災地のお見舞い、慰霊の旅といった分野以外の新しい公務には違和感があったのかもしれない。

 2008年、当時の長官が会見の場で、「(陛下から)未だに具体的な(新しい公務の)提案がない」と苦言を呈した。宮内庁幹部の中には、皇太子のことを庁内で軽んじるような名前で呼ぶ職員も存在し、「(両陛下の)公務の先が見えない」などと言われた。

 陛下は誕生日会見(2009年)の中で、「私がかつて言及しました『新しい公務』については、今まで行われてきている公務を否定する考えでは全くなく、時代の流れに沿って公務のニーズについてもおのずと新しい考えが生まれてくるので、それらの新しい公務のことを指摘したものであります」と説明された。そしてご自身の具体的なテーマとして、「水に関わる様々な問題」を再度挙げられた。

 公務のテーマとして示された水を含めた「環境問題」は、2000年代から徐々に世界的なテーマとなっていた。陛下も「世界水フォーラム」や国連の「水と衛生に関する諮問委員会」「水と災害に関する特別会合」などで基調講演をされ、名誉総裁をお務めになる機会があった。「アジア・太平洋水サミット」(2007年)では、スピーチが拍手喝采を受けたという。

2006年3月16日、第4回世界水フォーラム開会式であいさつされる天皇陛下 ©AFP=時事

日の当たらないところに目を向けて励まされる

 先の沖教授は、陛下のご公務についてこう振り返る。

「『アジア・太平洋水サミット』では、講演でトイレの話に言及されたのが印象的でした。上水道だけではなくてトイレも非常に大事だとおっしゃって、下水道関係の先生方や関係者は感激していました。日の当たらないところに目を向けて励まされるのは、天皇家の役割なのでしょう。

 陛下のご関心は、例えば、堤防を作ったり、水路を引いたりすることにとどまらず、そうしたことで私たちの暮らしや都市や街、国のでき方も変わるという人と水との『共進化』(影響しあって共に進化すること)という考え方にあるようです。昨年の国連『水の日のシンポジウム』では、湧水が豊富な沖縄・金武町にあるウッカガー(金武大川)という共同井泉の写真をご覧になって、非常に関心を示されたご様子でした」

#3に続く)

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