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2021/12/18

2017年の撃沈で「もう漫才はできないかも」

 M-1の歴史は2010年をもって、いったんはその幕を下している。それに代わって始まった賞レース「THE MANZAI」では2人はまったく評価されなかった。新人賞であるM-1は拙くても新しい漫才が求められるが、出場制限のない「THE MANZAI」は何より完成度が求められた。マヂカルラブリーの漫才は破壊的だ。勝ち目があるはずがなかった。

 その頃、野田は自分たちの漫才に限界を感じ始めていた。モダンタイムスの川崎のもとに疎遠になっていた野田から突然、電話があったのはそんなときだった。

「唐突に『お笑いを一生やるつもりありますか?』みたいに聞かれて。やるよって答えたら、『俺らも一生やるんで、どんだけ人気がなくなっても80歳までは会議室でもいいからライブしましょうね』と。目標にしていたM-1がなくなって、ドン底の時期だったんでしょうね」

©文藝春秋

 そんな2人に小さな光が差す。2015年にM-1が復活したのだ。マヂカルラブリーの挑戦が再び始まった。しかし、2017年に念願だったM-1決勝まで駒を進めたが、そこで撃沈。2人とも一時は「もう漫才はできないかも……」と激しく落ち込んだ。だが、野田は元来、侍のような男だ。

「ほんとの負け。いつかは決勝の舞台に戻って、そんときは勝たなきゃと思ってましたよ。俺がいちばんおもしろいって信じてるんで」

 雪辱を誓った2人は、2018年、2019年と連続で準決勝まで勝ち進むも決勝までは届かない。

2020年は予選から他を圧倒

 そうして迎えた2020年、マヂカルラブリーは予選から他を圧倒していた。1組だけ起こす笑いの質が明らかに違った。客の腹がよじれている、まさにそんな笑いだった。

 同じく決勝まで勝ち進んだアキナの山名文和は、羨望の眼差しでマヂカルラブリーのウケ方を回想する。

「お客さんが、ずーっと笑ってる。(疲れて)笑い終わっても、また、すぐに笑い出す。あんな風にウケたら、幸せやろなと思います」

 しかし、そこまで抜けていても戦前、マヂカルラブリーの優勝を予想する記者や芸人は皆無に近かった。