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「夫の髪の毛が落ちている家に帰りたくない」と日記に書いていた妻

話を聞きながら、私は彼にはきっと守りたいものがあったのではないかと感じました。男性には、妻を殺害しなければ守れない大切なものがあったのではないかと。

――「守りたいもの」ですか?

妻の日記に〈もっと給料の高い男と結婚すればよかった〉〈夫の髪の毛が落ちている家に帰りたくない〉〈この結婚は失敗だった〉と記されていたと裁判で明らかにされました。

あるとき男性は「てんかん」の発作で病院に運ばれています。病院でたくさん知り合いが働いているからなのか、妻は「なんでここなの、恥ずかしい!」と激怒しました。その後も「子どに遺伝したらどうするのか」と責められ、「病人にはまかせられない」と子どもを自由に抱き上げることさえできなくなります。

また「てんかん」でクルマの運転ができなくなった夫を妻は「マジ使えね」と侮蔑しました。そうした夫婦関係のなかで、男性はどんどん追い詰められていったのでしょう。都市部に暮らす人にはなかなか理解してもらえないかもしれませんが、地方では「クルマと家庭を持ってこそ一人前の男」という価値観がいまだに根強いですから。

――妻だけではなく、男性も価値観にとらわれ、かたくなに守ろうとした結果、限界に達して事件に発展した、と。

ええ。二人とも岩手県で生まれ育ちました。すべてを否定するつもりはありませんが、地方にはロールモデルが極端に少ないという問題があります。クルマと家庭を持ってこそ一人前の男。30歳までに結婚して子どもを産まない女は女じゃない……。

広く世界を見れば、一人前の男になる必要も、女らしいとされる生き方を選ぶ義務もないんですが、ロールモデルがないゆえに、二人は地方の常識に従って生き、結婚した。地方で純粋培養された二人には、生き方の選択肢を増やす機会が少なかったのではないかと感じました。