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〈私はなぜ藤井聡太に勝てるのか〉将棋界の“地球代表”深浦康市九段の戦略と藤井四冠が陥った“100点満点の手”のワナ

深浦康市九段インタビュー #1

source : 文藝春秋 2022年1月号

genre : エンタメ, 働き方, ライフスタイル, スポーツ

 4連勝のストレート勝ちで史上最年少の四冠に輝き、現在は最年少の五冠に挑んでいる将棋界の若きスター、藤井聡太氏。1月9日から開幕する「第71期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局」では、名人・棋王も保持する渡辺明王将に挑む。

 藤井四冠に唯一、2勝以上、勝ち越しているベテラン棋士の深浦康市九段による「私はなぜ藤井聡太に勝てるのか」(「文藝春秋」2022年1月号)を特別に全文公開する。(全2回の1回目/後編に続く)

藤井聡太四冠と対局する深浦九段 ©共同通信社

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「羽生や藤井が将棋星人なら、地球代表が深浦だ」

 いま将棋の世界の中心にいるのが藤井聡太さんだということは、皆さんもご存じでしょう。先日、将棋界最高峰のタイトル「竜王」を奪取して、史上最年少、初の10代での四冠に輝きました。相手の豊島将之さんもトップ3に入る実力者なので、きっと競り合う内容になると思っていたのに、まさかの4連勝。これには私も驚きました。

 プロデビューして30年、中原誠先生や米長邦雄先生、谷川浩司さん、羽生善治さんといった名だたる棋士と対戦してきた私から見ても、特筆すべき才能だと思います。

 将棋ファンのなかには、かつて全タイトルを独占していた羽生さんと、藤井さんをならべて「将棋星人だ」と言う人もいるそうです。あまりに人間離れした強さなので、同じ星に生まれたとは思えないということでしょう。それは分かりますが、その2人に続いて、私の名前が挙げられていると知り、ビックリしました。

「羽生や藤井が将棋星人なら、地球代表が深浦だ」

史上最年少で四冠を達成した藤井聡太 ©共同通信社

 初めて聞いたときは「地球代表ってどういう意味なの?」と、クエスチョンマークがたくさん頭に浮かびましたが、将棋星人に対抗できる地球人の代表ということだそうです。

 私と藤井さんの対戦成績は3勝1敗。藤井さんに2勝以上、勝ち越している棋士は私だけなので、それをファンの皆さんも「地球代表」という言葉で評価してくださっているのでしょう。

 もうすぐ50歳になる私が、なぜ若き第一人者の藤井さんに勝てるのか。職業上の秘密なのですが、少しだけ明かしてみましょう。