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「和食=がん予防策」の落とし穴 がんにならない食生活#1

2017/12/04
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「食事とがん」については昔から様々なことが言われてきましたが、確たる根拠がないのが実情でした。予防研究機関のトップである国立がん研究センターの社会と健康研究センターでセンター長を務める津金昌一郎氏が、データに裏打ちされた最新のがん予防法を指南します。 

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 2人に1人ががんになると推計され、3人に1人ががんで命を落としている現代。私たちにとって、がんという病気が大きな脅威であることは言うまでもありません。「がんにならないように予防できれば」と考えるのは、現代人共通の思いでしょう。 

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 がんに限らず病気予防を考える上で、まず思い浮かべるのが「食事」です。私たちは食べることで栄養を補給し、健康を維持しています。その根源となる食事を見直すことで、病気予防に役立てようと考えるのは、至極もっともなことです。 

 もちろん医学界でも、昔から「食事とがん」の関係については興味を持たれており、動物実験レベルでは盛んに研究が行われていました。 

「焼き魚のコゲはがんのもと」という話を聞いたことがある人もいると思います。これは焼け焦げから抽出した化学物質をネズミに投与したらがんができた――という実験から派生した推察です。 

©iStock.com

 ちなみに、本当に魚のコゲを食べるとがんになるのかと言えば、これまでに確かな証拠はありません。焼肉や焼き魚のコゲの部分だけを、毎日山盛りで食べていれば別ですが、一般的な食生活の中で摂取される程度の量であれば、発がんリスクをそんなに心配する必要はないでしょう。 

 巷で流れる「食事とがん」の話題は、ウソとまでは言い切れないものの、拡大解釈されて広まっているものが少なくありません。そこでこの章では、世界規模の研究と、日本人を対象とした調査の両面から検証して、信頼性の高いデータをもとに、読者のがん予防に役立つ情報を紹介していきます。 

 個別具体的な食材についてはこれから触れていきますが、まずは特に気を付けるべき、大きな4つの方針について述べたいと思います。