天皇皇后両陛下の長女・愛子さまは、今年初めて新年祝賀の儀に出席され、歌会始の儀ではお歌を披露されるなど、両陛下のサポートのもと、成年皇族として皇室の行事に臨まれています。ジャーナリスト・友納尚子氏の「皇后雅子さま『外交』デビューの舞台裏」(「文藝春秋」2019年8月号)を特別に全文公開します。(全2回の2回目/前編から続く)
(※年齢、日付、呼称などは掲載当時のまま)
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「雅子さまー!」「両陛下ー!」
皇后雅子さまのもう一つの大きな目標は、四大行幸啓のひとつ「第70回全国植樹祭」へのご臨席だった。
6月1日午前11時40分、両陛下は名古屋駅に到着された。即位後初めての地方公務とあって駅前には、そのお姿を一目見ようと大勢の人たちが集まっていた。
「雅子さまー!」
「両陛下ー!」
両陛下が現われると、気温27度の暑さに熱気が加わった。陛下は紺のスーツに薄いグレーのネクタイ、皇后は白いリボンで縁取られた薄いグレーのパンツスーツ姿だ。
両陛下は、笑顔で手を振って応えられ、御料車の「センチュリーロイヤル」で宿泊先のホテルへ向かった。その姿が見えなくなるまで、携帯のカメラを高く掲げて向ける人たちで溢れ返っていた。
トランプ大統領夫妻を迎えた際、皇后のおもてなしが注目されてから、雅子さまファンが急増しているのだという。しかも若い女性や夫婦が増え、確実に年齢層は下がっていた。
愛子さまが小学生時代に不規則登校になった時には、報道を通じて批判が高まり、公務がままならない雅子妃殿下に「税金泥棒」などといった心ない言葉が沿道から聞えたということが嘘のようだ。
両陛下の行く先々に多くの人たちが詰めかけ、御料車が通り過ぎるわずか数秒であっても両陛下を一目見たいと何時間も待機している人たちがいた。
午後に訪れた「あま市七宝焼アートヴィレッジ」では、1.5メートルという最大級の七宝焼「間取り花鳥文大花瓶」をご覧になられた。明治時代にフランスに輸出され、30年前に買い戻されたものだ。実は、雅子さまがこの花瓶をご覧になるのは、今回で2度目だという。
「2005年の夏に愛知万博(愛・地球博)を視察された際にもご覧になっています。当時の皇后さまは1年前に適応障害と診断されていたのですが、東宮職にもご病気であることを理解されず基本的に公務優先でした。その日も病を押して1年8カ月ぶりに地方公務に臨まれたのですが、体調が思わしくないようで、ふらふらされていました」(宮内記者)