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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

「残虐な犯行であって、人命軽視の態度は甚だしく…」北九州監禁連続殺人事件で死刑が求刑された理由

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #85

2021/12/28

genre : ニュース, 社会

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第85回)。

北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

「著しく短絡的、動機は悪質極まりない」「同情の余地はない」

 松永太と緒方純子に対する福岡地裁小倉支部での裁判は、これまでに記した通り、逮捕から約3カ月後の2002年6月3日に始まった。しかし、その後に殺人での立件が続いたことにより、第3回公判の期日は延期され、改めて03年5月21日から、殺人罪を含めて争われるようになった。

小学生時代の松永太死刑囚(小学校卒業アルバムより)

 同年10月以降は、週1回のペースで審理が行われるようになり、それは05年1月26日の第72回公判まで続く。

 そしてその次の05年3月2日の論告求刑公判において、検察側による求刑が行われた。検察官によって約4時間半をかけて朗読された論告書(以下、論告書)は、以下のようにしめくくられている(一部を抜粋)。

〈本件は、既にいずれも熟年の域に達している被告人両名(松永と緒方)が、平成8年(1996年)2月から平成10年(98年)6月までの間に、何ら落ち度のない被害者7人をその支配下に置き、まともな食事も与えないままに通電等の虐待を繰り返すなどした上で、かけがえのない生命を次々に奪ったほか、乙女(原武裕子さん=仮名、以下同)に対する詐欺・強盗事件及び監禁致傷事件を敢行し、その後も、甲女(広田清美さん)に対して監禁致傷事件を犯したというものであり、全国的にも「北九州監禁連続殺人事件」として大きな社会不安を招いた事件であって、犯行の罪質、結果、社会的影響は極めて重大である〉

 続いて論告書はふたりの犯行動機について触れる。

〈いずれも、被告人両名が被害者らを監禁状態において支配し、過酷な生活制限と虐待を通じて厳しく金銭的に搾取し、その全財産を巻き上げて被告人両名の逃亡・潜伏資金とすることと、当該被害者に対する犯行、あるいは過去の種々の犯行の発覚を免れる目的にあり、いずれも自己中心的である上、被告人両名は、これら被害者が金づるとしての利用価値を失ったと見るや、口封じを兼ねて安易にこれを殺害してきたというものであり、著しく短絡的でもあって、動機は悪質極まりない。取り分け、被告人両名は、これら一連の犯行を敢行する過程で、再三にわたり犯行を踏み止まる機会があったにもかかわらず、刑事責任の追及を免れることばかりに汲々とし、更に重大な犯行を犯し続けてきたものであって、同情の余地はない〉