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「ウケたら認めてくれる」“M-1史上最強のアマチュア”『変ホ長調』が語る“伝説の決勝”への舞台裏 と『笑い飯』哲夫がかけた「一言」

変ホ長調インタビュー #1

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 50歳と43歳の“おじさんコンビ”錦鯉の優勝で幕を閉じたM-1グランプリ2021。2001年の第1回大会から17回を数えるM-1の歴史において、決勝に進出したアマチュアコンビが1組だけ存在することを知っているだろうか。

 “最強のアマチュア”として2006年大会の決勝に出場した「変ホ長調」は、小田ひとみと彼方さとみの2人からなる女性コンビだ。時事ネタや固有名詞を多用する雑談風の漫才を持ち味とする彼女たちは、昨年迎えたM-1ラストイヤーでは2回戦で敗退したものの、今年の「THE W」で準決勝に進出するなど息長く活動を続けている。

 アマチュアでありながら、なぜプロ芸人が人生をかけてしのぎを削るM-1のファイナリストになれたのか。結成の経緯から決勝に進出した2006年大会、ラストイヤーを終えた今年のM-1の感想まで、今もなおアマチュアを貫く2人にたっぷりと語ってもらった。(全2回の1回め/後編を読む

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「変ホ長調」の彼方さとみ(左)と小田ひとみ ©文藝春秋 撮影=鈴木七絵

会社員で“遠距離コンビ”  ネタは4人で考える

――普段は小田さんは大阪、彼方さんは東京で会社員をされているとか。いつから“遠距離コンビ”になったんですか。

彼方 私が東京に出たのが2003年なので、コンビを結成した2005年の時点ではすでに遠距離でした。もともとは会社の同僚で、その後も友達として関係を続けていたから、その日あった嫌なこととか愚痴をメールで送り合っていたんです。

©文藝春秋 撮影=鈴木七絵

小田 普段喋ってることが妙に面白くって、それが最初のネタになりました。

彼方 「六本木ヒルズに合コンに行きたい」って私が言って、小田さんに「それは高望みやなあ」って言われるみたいな。

――ネタ合わせはどうされているんですか。

小田 ネタの大枠はメールで作っています。あとはやっぱり実際に会わないと詰め切れないので、本番の少し前に会って直して、覚えた頃に本番。昔から常に綱渡りです。あとは友達に見てもらったりもしています。

彼方 実は私達、4人チームで変ホ長調なんです。私達が出役で、他の2人も交えてネタを作ってます。最初、2005年にM-1に出たときはまだ私達だけでやってて、ネタを見てもらおうということで後の2人が入りました。

小田 今もメインは4人ですけど、他の人でもお笑い好きって聞いた瞬間、「ちょっと読んでもらえる?」「ちょっとネタ出してくれるかなあ」とかネタを持って聞きに行ってます。意外と普通に働いてはる人が面白いこと考えるんですよ。

2005年には「R-1ぐらんぷり」にも出場

――変ホ長調を結成して、M-1に初めて挑戦されたのが2005年でした。そもそもどういう経緯で結成したんですか。

小田 きっかけはかなちゃん(彼方)が2005年の「R-1ぐらんぷり」に出たことですね。

彼方 私は小田さんと一緒に働いていた会社を辞めたあと、東京で派遣社員をしてたんです。でもそれがめっちゃ暇で、なかの芸能小劇場でやってた「東京ビタミン寄席」とかのライブに週3回ぐらい通ったり、放送作家セミナーに通ったりしてたんですよ。

小田 もともと劇団員やったから、北川悦吏子さんとか内館牧子さんとか大石静さんみたいな女性シナリオライターに憧れててんね(笑)。

©文藝春秋 撮影=鈴木七絵

彼方 王道の劇作家とかシナリオ作家になりたいなと思ってたんですけど、表参道とかにある“ナントカさん輩出”みたいなウリ文句のセミナーは30万円ぐらいするんですよ。これは無理やなと思ってたら、浅井企画さんのセミナーが3万円やった(笑)。それでそこに通ってたら、先生から「ネタを書くなら演者の気持ちをわからないと。全員R-1に出ろ」と言われたんです。