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「自宅を売って老母を施設に入れよう」そう考えていた52歳男性の頭を真っ白にさせた司法書士の質問

source : 提携メディア

genre : ライフ, 経済, 人生相談

認知症になった家族のために、財産をうまく管理するにはどうすればいいのか。司法書士の岡信太郎さんは「『家族信託』という仕組みがある。ただし、家族が認知症になる前に契約する必要がある」という――。

※本稿は、岡信太郎『財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/byryo ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

母の所有する不動産のことが気がかりで…

宇都宮さん(52歳、男性)は急いである不動産会社に問い合わせを入れました。

「少し前から母が入院し認知症もだいぶ進んでいます。前回、御社のセミナーで民事信託がいいとお聞きしました。ぜひ、進めたいのですが……」

宇都宮さんは、先週末、問い合わせを入れた不動産会社主催のセミナーに参加していました。そこでは、【不動産の生前対策】と題して、家族で取り組むことができる対策についての講義が行われました。その時、民事信託いわゆる家族信託を使えば、子どもが親の不動産を売却できると知ったのです。

宇都宮さんは、不動産を所有する母親の認知症が進んでいるため、不動産のことが気になっていました。そこで、このままではいけないと、思い切って問い合わせを入れたのでした。

不動産会社の担当者は、「民事信託をご検討されているのですね。それでしたら、弊社提携の司法書士と一緒にお話をお伺い致します。ご予定はいつがよろしいですか?」と専門家を紹介してくれることとなりました。

宇都宮さんはすぐに予約を入れました。そして、後日担当者と一緒に司法書士の事務所に行くことになりました。

“これで大丈夫だろう。他の兄弟たちにいい報告ができる”と胸をなで下ろしました。

「ところで、お母様は信託について同意されていますか?」

実は、その2カ月前、宇都宮さんは兄弟たちと家族会議を行っていました。

8年前に亡くなった父親は大工でした。小さな工務店を経営し、腕一本で家族を養いました。母親は子育てをしながら時間を見つけては工務店に出て、父親の手伝いをしていました。