昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/02/05

適切に答えられない被告に裁判長が苛立つ場面が

 LINEを受け取ったのは、第2回公判終了後のことだった。裁判を傍聴したひとりの女性が被告のことを「かわいそうだった」と伝えていた。熊本市にある民間病院・慈恵病院の理事、蓮田真琴氏だ。

 慈恵病院は赤ちゃんを自分で育てられない女性が匿名で預け入れることのできる施設「こうのとりのゆりかご(通称、赤ちゃんポスト)」(以下ゆりかご)を運営する。同院理事長で夫の産婦人科医・蓮田健氏とともに責任者を務める。

 ゆりかごを設置して14年間に159人の赤ちゃんが預け入れられたが、乳児遺棄事件は2016年は15件、2017年が19件、2018年が17件と、発生件数に変化は見られない(社会保障審議会児童部会児童虐待等の検証専門委員会調査より)。

赤ちゃんポストを設置する熊本の慈恵病院 ©共同通信社

 乳児遺棄事件を起こした母親たちがゆりかごを選ばなかった理由を知るために、夫妻は数年前から乳児遺棄事件の裁判を傍聴している。イタリア公園事件の第2回公判が行われた2021年9月14日は、真琴氏が傍聴に上京していた。真琴氏は裁判の様子を次のように話した。

「被告が一つ一つの言葉の意味を理解できていない様子ははっきりとわかりました。誤魔化すように笑い顔を浮かべ、気の毒なほどでした」

「自首」「殺(あや)める」といった言葉の意味がわからず立ち往生し、適切に答えられない被告に裁判長が苛立つ場面があったという。

グレーゾーンの「境界知能」

 被告のおぼつかない振る舞いには理由がある。被告は「境界知能」だったのだ。鑑定医による精神鑑定の結果として公判で明らかになった。

 知能指数の平均域を100前後とすると、50~70が軽度知的障害とされるが、「境界知能」はその境目となるおおむね71~85未満を指す。グレーゾーンとも呼ばれる。軽度知的障害では複雑な情報の処理や、先行きを見越した行動、問題の解決が苦手とされる。そのため学習、仕事、お金の管理、子どもの養育など社会生活で苦労を抱えやすい。

z