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「このままでは燃料費でつぶされる」苦境に陥ったANAの“救世主”が貨物輸送だった本当の理由

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「文藝春秋」2月号よりANAホールディングス社長の片野坂真哉氏による「ANAコロナ戦記」を全文公開します。(全2回の2回目/前編から続く)

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「救世主」となった貨物輸送

 事業面でわれわれの「救世主」となったのが貨物輸送の分野でした。このコロナ禍でも需要は高まる中で、すべてのお客様のご要望にはお応えできず、貨物担当のスタッフは、「貨物機がもっと欲しい」と言ってくる。国内線と国際線の収入を国際貨物が上回る月があるほどで、21年度の貨物の売上高は過去最高を達成しています。

 コロナ前は、フレイターと呼ばれる大型の貨物専用機を2機、保有していたものの、フル稼働という状態ではありませんでした。それがいまでは、シカゴやロサンゼルス、アジア各地と日本を往復しフル稼働しています。フレイターなら完成車を最大10台ほど運べるという特長を活かして、モーターショー展示用や試作車を輸送しています。

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 これに9機ある中型機の767フレイター、それに貨物輸送に用いた旅客機も合わせると、フライト回数は上半期だけでおよそ6500回。貨物輸送は驚くほど伸びているのです。

医薬品の輸送需要も増加

 この背景には、各国の経済の急回復と世界的な国際旅客便の運休があります。これらによって海運輸送の需要が大盛況に。しかし、世界的にコンテナが不足し、海運を利用できない。利用できた場合も、港湾労働者やトラックドライバーが足りず予定通りに届かないため、特需が航空に回ってきました。これには大変助けられました。混雑が続いているため運賃も高騰しています。

 貨物の内容にも大きな変化がありました。世界的に半導体が不足している状況をうけ、半導体製造装置の輸送が大きく増えたのです。

 他にも、メキシコには主に車の部品を載せた飛行機が毎日運航しています。日産やホンダ、トヨタをはじめ1000社以上の日系企業がメキシコに進出しており、そこで車を作ってアメリカやカナダに売るサプライチェーンができているためです。

 コロナの影響で、医薬品の輸送需要も一挙に増えています。温度調整など扱いに慎重を要するものもありますので、成田空港に温度調整のための倉庫を用意しました。ファイザー社のコロナワクチンも、120回以上のフライトを一度のミスもなく確実に運ぶことができました。