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病院では「それはやっちゃダメ」と制限されてしまう

その後、宮本さんは知人からの誘いで病院から介護老人保健福祉施設へ転職し、15年前からは訪問看護師として「患者が家で過ごすこと」をフォローしている。

以前の記事(本連載第5回)に記したが、訪問看護とは看護師が患者宅に訪問して、その患者の障害や病気に応じた看護を行うことだ。健康状態の悪化防止や回復に向けた措置のほか、訪問医の指示を受けて点滴・注射などの医療措置や痛みの軽減、服薬管理なども行う。

「患者さんは家で過ごすとリラックスできるので、痛みが和らぐと思います。人によっては半減するかもしれません。だってごはんは食べたい時に食べられる。入浴も、病院や施設では禁止されていたり、日時が決められていますが、自宅なら本人が入りたい希望があれば叶えられる。病院はやはり大勢の患者さんがいるため『時間の管理』が必要で、行動によるリスクが少しでもあると“それはやっちゃダメ”と制限されることが圧倒的に多いです」(宮本さん)

病室を「家のように安らぐ場所」とするのは難しい

前出の吉野清美さんからは「『病院が臭い』といって在宅を選んだ患者さんもいる」と教えてもらった。

「その方は70代男性で、大腸がんを発症し、肝臓にも転移している状態でした。ストーマ(人工膀胱:手術によっておなかに作られる便や尿の排泄口)があって入院していたのですが、時々おなかが痛くなってトイレにこもりたい時に、ゆっくりいられないと訴えていました。2時間くらいトイレにいると、看護師さんが心配して来る。ありがたい反面、自分のペースで過ごすことができない、そして病院は臭い、と。一人暮らしだったのですが退院して家で過ごすことを選びました」

本連載第1回に登場した訪問看護師の小畑雅子さんは、「家での死」と「病院での死」の違いをこう話す。

「一言でいうなら、『病院での死』は主体が医療者であって、治療もケアも医師や看護師主導です。病室は家とは違い、患者さんにとって“安らぐ場所”になるのが難しいです。一方で『家での死』は医療介入はありますが、主体は患者さんとご家族で、人生を完結させるという違いがあります。人生の振り返りやこれからの希望について話す機会も多くあって、ご家族も介護の中で徐々に死別を受け入れ、最期は落ち着いて看取りをされた方もたくさんいました」

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