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美智子さまは最上の“アクトレス”

「大衆天皇制」ですか。私が美智子さまのご成婚パレードを見たのは保育園児のときでしたが、いまでも脳裏に焼きついています。近くの電器屋さんの店先のテレビで、近所の人みんなで見たなあ。

林真理子さん ©文藝春秋

御厨 テニスコートの恋を実らせたお2人のシンデレラ・ストーリーに、国民は新しい皇室の風を感じました。中流家庭の理想像を見るようになり、皇室は神聖不可侵なものではなく、大衆にとっての「スター」になったわけです。松下は論文でこう書いています。

〈皇太子はスキーでころんだり、テニスをやっても女の子に負けてしまう。それに恋すらするではないか。このような皇室をかこむ雰囲気の変化は、憲法上の天皇の地位の変化以上に重要とみたい。今日、皇室は大衆にとってスターの聖家族となったのである〉(「大衆天皇制論」『中央公論』59年4月号)

林 なるほど。たしかに皇室はずっと、日本人にとっての「理想の家族」でしたよね。

御厨 その中心にいたのが、美智子さまです。美智子さまは、皇室における最良かつ最上の“アクトレス”ですよ。表現力と国民を感激させる力は類を見ない。

林 女優ですか。

御厨 はい。美智子さまの動向はテレビや週刊誌を通じて大衆に消費されていきました。戦前の「絶対天皇制」が臣民の皇室に対する「畏怖」を支配の基盤としたのに対し、戦後の「大衆天皇制」は皇室への「親愛」の情に支えられる。この松下の指摘は正しいと思います。

林 私もテレビで観た美智子さまが本当に美しくて、この方が日本の皇室にいて下さって本当によかったなんて、心から思います。

御厨 それが昭和から平成をまたいで令和へ来て、今や大衆が天皇制そのものを無視している。大衆天皇制という考え方が全く以て崩壊してしまっているんですよ。

林 眞子さまもスターとして注目されることに辟易していたんじゃないでしょうか。「結婚して早く皇室から出たい」とおっしゃっているという報道もありました。私は以前、別の宮さまの女王さまにお目にかかったことがあるのですが、外出や食事はもちろん、いついかなるときもSPの方が付いていて、デートのときもこんなのじゃ大変だろうな、なんて思いました。

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