大衆の人気こそが戦後皇室を支えてきた歴史と、令和の皇室における秋篠宮家の長女・眞子さんと小室圭さんの結婚についてどう受け止めるべきなのか。『李王家の縁談』を上梓した林真理子さんと東京大学名誉教授の御厨貴さんが、象徴天皇制を揺さぶった皇族の結婚問題について語り合った、「文藝春秋」2021年11月号掲載の対談を公開する。(全2回の2回目/前編から続く)
(※年齢、日付、呼称などは掲載当時のまま)
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佳子さまの自由なふるまいと、皇族然とした愛子さま
御厨 最近は、結婚が「家」同士のものという考え方そのものが薄れてきていますからね。
林 旧家と呼ばれる家の方々であっても、「本人の好きな人と結婚するのはしょうがない。毎年ちょっとお墓参りに行ってくれさえすればいいよ」といった具合で、親世代も諦めている節があると聞きます。
御厨 その流れが天皇家にもスライドしているということでしょう。ただ大前提として、天皇制は家と家との結婚で維持されてきた歴史がある。それがいつしか、自由恋愛であるとか、個人の自由を重んじるような風潮が出てきた。眞子さまもそうですが、妹の佳子さまも「姉の一個人としての希望がかなう形に」とコメントしています。一個人である前に、公的な立場であるという意識が少し欠けているのかもしれません。
林 やはり眞子さまや佳子さまの自由なふるまいを目にすると、皇族然として正道を行かれる愛子さまのお姿に好感を抱く国民はかなり多いと思うんです。聡明で、お人柄もすばらしいというお話も洩れ伝わってきます。本当は東大を狙えるほどの学力なのに、お立場を考えて学習院に進まれているとか。ここにひとつの救いがある気がします。
御厨 そうですね。愛子さまに関しては、いっとき不登校などという報道もありましたが、いまやすっかり国民から愛されている印象です。となると、ここで出てくるのが、「女性天皇でもいいじゃないか」という問題。ただ、これがなかなか難しい。今、政府の新たな有識者会議で検討していますが、おそらく決定的な結論は出せないと思います。
林 素人考えで申し訳ないですが、皇室典範というのはそんなに変えるのが難しいのですか?
御厨 難しいのでなく、みんなが難しく考えているんです。現在の皇室典範は1947年、日本国憲法とともに施行されましたが、明治につくられた旧皇室典範と同じく皇位継承は男系男子に限り、直系長子優先と定めるなど骨格は変わらなかった。女性皇族の皇位継承権を認めなかったのです。専門家でさえ「不磨の大典」、つまり擦り減らないほどすばらしく、翻って改正が困難だと考えているんですね。