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園遊会で美智子さまが「まあ、真理子さん」

御厨 その通りです。天皇陛下が存在するだけで、各国への影響は非常に大きいのです。海外から要人が来たときに、「誰に会いたいか?」と問われれば、首相でなく、口を揃えて「天皇陛下」と言う。宮中晩餐会や園遊会などに招かれた人々はみな不思議と心豊かになって、「ああ、お目にかかれて本当によかった」となるわけです。

林 以前、園遊会にお呼ばれしたことがありました。前を通られた美智子さまが私の顔をご覧になって、「まあ、真理子さんじゃない。きれいなお着物で。よくいらしてくださったわね」なんて話しかけてくださったんです。本当に生きていてよかったと思いましたよ。

上皇后陛下ご近影(宮殿)宮内庁提供

御厨 そのいわく言い難い、皇室に存在する「豊かさ」のようなもの。それに触れて、感じる人を増やさなければいけません。

林 若い人が天皇家の歴史や存在の意義を知らない、ということもありますよね。

御厨 それは私たち世代の怠慢でもあると思います。私は大学で政治学や政治史を教えていますが、戦犯問題などもあってあまり深く議論せずにきてしまいました。憲法学なんかもそうです。天皇の存在というのは大日本帝国憲法でも、今の日本国憲法でも、一番最初に出てくるんですよ。けれども大日本帝国憲法については講義しないし、日本国憲法については人権条項とか平和条項とかの方が大事だからといって、天皇条項についてはこれまたあんまり議論しないで来ちゃった。だから大学でも「統治の王」としての天皇の存在ということをまっとうにやってない。ある時期から僕は「これはもうちょっとちゃんとやっておくべきだったかな」と、自ら反省しています。

李王家の縁談』(文藝春秋)

林 ああ、そうなのですね。国文学の世界でも天皇研究となると、少しマニアックな扱い方をされてしまいます。あくまで学者の研究対象、と隅に追いやられてしまって、「いまを生きる天皇」という視点が欠けてしまうのでしょう。

御厨 国民と皇室を近づけるという意味では、いま政府は皇居をはじめ皇室関連施設を少しずつ国民に開放しようとしています。すでに乾通りの期間限定公開などは実施されていますが、皇居内を国民に見せる、皇居前広場をもっと開く、といったことです。これらは実は菅前首相によるものなんです。この問題に関してはいろいろな省庁が関係していますから、みんな嫌がって進まないのですが、菅さんが官房長官時代に推し進めました。

林 意外ですね。

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